測定工具に錆が発生する、、、こんなことありませんか?私も経験あるのですが、最近では錆の予防方法が分かったのでさびが発生することがありません。
多分ですが普通は洗浄せずに、防錆剤を吹きかけて保管ってパターンが多いと思います。でもこのやり方では錆びが発生するリスクが高いです。
単刀直入に言いますと、測定工具を錆びさせないためには、「洗浄剤」でクリーニングして、「防錆潤滑材」を塗布して、「防錆シート」で包んで保管する方法が有効です。
と言うことで、今回の記事では、測定工具を錆びさせないための方法についてまとめておこうと思います。
記事の目次
測定工具は汗で錆る
測定工具は表面が錆びる
測定工具の必要性を改めて考えると、部品やユニットの「精度の数値化」であったり「平面や直角の度合いを目視判断」するために必要不可欠な存在ですよね。
例えばこんな測定工具がありますよね。
- ピンゲージ
- リングゲージ
-
ブロックゲージ
-
精密直角スコヤ
-
ストレートエッジ
出典:大西測定株式会社 ストレートエッジ カタログ
このような測定工具の多くは材質が「鋳物」や「鋼」で、しかも、基準面には「表面処理」がありません。となると、決まって問題になることがあります。
測定工具の問題点はコレ
-
汗で錆びる
精密直角スコヤの錆
使用後のクリーニングが適切に出来ていなくて、防錆油を塗っていたが汗が付着した部分が錆びてしまった
皆さんには、このような経験ありませんか?
一度錆が発生すると、研磨などで削り取ってしまわない限り、錆を取り除くことができません。ちょっと拭き取ったぐらいでは凸部分の錆しか取り除くことができず、表面の凹の部分でしっかりと錆が進行していくことになるんです。
錆の原因は「汗」です
人間の汗の99%は水分、残りの1%に塩分などの物質が含まれていて、弱酸性の液体です。付着した汗の水分は時間が経てば蒸発しますが、その他の物質は濃縮して金属の表面に残留して、錆(腐食)を発生させます。
汗の成分はについては、下記の引用をご覧ください。
引用:花王 汗の成分は何?
普通の汗(エクリン汗)の成分は、99%が水で、残りの1%に乳酸や尿素、塩分などが含まれています。
汗の成分バランスは、季節によって微妙に異なり、春先~夏にかけては、ナトリウム、カリウムなどの含有濃度が少し高くなります。約99% 水分
約1% ナトリウム、塩素、カリウム、カルシウム、重炭酸、アンモニア、尿素乳酸
そもそもですが、測定は温度の影響を受けるので、JISやISOでは測定環境の規定をしていて、規格の作業環境であれば作業者が汗をかくリスクはかなり低いんです。ところが、温度管理された測定室を持っている機械装置メーカーはそうそうありません。コストが掛かりすぎるのです。実際、私の勤め先には温度管理された測定室はありません。
測定の環境の規格
JIS規格の「JIS Z 8703」では測定環境について下記のように規定しています。
-
標準状態の温度 標準状態の温度は,試験の目的に応じて20℃,23℃又は25℃のいずれかとする
-
標準状態の湿度 標準状態の湿度は,相対湿度50%又は65%のいずれかとする
-
標準状態の気圧 標準状態の気圧は,86kPa以上106kPa以下とする
逆に考えると、作業者が汗をかいても測定工具に汗が付着しなければ良いので、肌の露出がない服装で「手袋」や「ゴム手袋」を着用すれば良いでしょって話しなんですが、実はこれは不十分なんです。
手汗は乾くことなく手袋の中に液体で溜まって、袖のすき間から垂れてくるのです。特に汗っかきの人は、手袋から漏れてくる汗が尋常じゃなく、いくら気を付けても測定工具に汗が付着してしまうのです。
徹底的にクリーニングして防錆処理して保管
使用後に洗浄剤でクリーニングする
私が今までいろいろと試した結果、測定工具の錆対策として一番有効な方法は、使用後に徹底的にクリーニングすることです。
クリーニングを怠ると、いくら油を塗布しても、防錆シートで包んでも錆が発生します。これは私が経験してきた結果から断言できます。
次に、クリーニングの方法ですが、パーツクリーナーやアルコールでは洗浄力が不十分なので、専用の液体を使用することにします。
測定工具の洗浄におすすめの液体はコレ
-
ノルマルヘプタン【炭化水素系の洗浄液です】
「洗浄なんてパーツクリーナーで十分でしょ」って思うかもですが、実際に使ってみると雲泥の差です。パーツクリーナーは、油分が伸びているだけで拭き取りが不十分になるのですが、洗浄剤は少ない量でしっかり拭き取ることができます。
出典:東洋化学商会 クリーナーA 420ml
ノルマルヘプタンは、測定器メーカーのミツトヨさんがブロックゲージの洗浄に使用している炭化水素系の溶剤で、洗浄力が高い割に金属を犯すことがないのでおすすめです。
ノルマルヘプタンの洗浄液が手に入らない場合は、「金型洗浄剤」とか「脱脂洗浄剤」がおすすめで、成分が炭化水素系であれば洗浄能力が期待できます。
クリーニングのやり方は、洗浄液をウエスに浸み込ませて念入りに測定工具を拭くだけですが、可能であれば、クリーンウエスのような目が整ったウエスを使用すると、拭きむらなくクリーニングできます。
測定工具の表面に防錆処理する
測定工具を洗浄液でクリーニングしたら、乾燥させて測定工具の表面に防錆潤滑剤を塗布して防錆処理をおこないます。
防錆潤滑剤の成分は基本的に「鉱物油(鉱油)」「防錆剤」「その他の物質」の溶剤で、金属表面に浸透して皮膜を形成することで雰囲気を遮断し錆を防ぎます。
例えばこんな防錆潤滑剤があります
-
KURE 3-36
-
ゲージ用防錆剤 潤鉄
-
モリコート スーパーグリス
KURE 3-36 は5-56よりも防錆に特化した商品です。ホームセンターで入手できて、しかも値段も安いので、とりあえず防錆剤が欲しいって場合におすすめす。
出典:呉工業株式会社 3-36
日本ケミカルさんは、多くの種類の防錆剤を販売している有名どころです。中でも、ゲージ用防錆剤 潤鉄は測定工具専用の製品です。一番のネックは価格が高いことです。
出典:日本ケミカル株式会社 ゲージ用防錆剤 潤鉄(じゅんてつ)
モリコートのスーパーグリスは、ミツトヨさんがブロックゲージの防錆に使用しています。信頼性もあり価格も手ごろなので、おすすめです。
出典:オレンジブック モリコート 防錆潤滑剤“モリコート(R) スーパーグリス
防錆潤滑剤は、測定工具に直接吹きかけるか、ウエスに浸み込ませて塗布します。私はスプレーで飛び散るのが嫌なのでウエスで塗布する派で、車にワックスをかけるように、薄く優しく塗布しています。
因みにですが、このような防錆潤滑剤が入手できない場合は、リチウムグリスやワセリンを塗布する方法も効果があります。リチウムグリスはホームセンターに、ワセリンは薬局で、必ず入手できます。
防錆効果があるアイテムで保管する
防錆潤滑剤が塗布出来たら、最後に防錆効果があるアイテムを使って保管となります。
防錆効果があるアイテムとは「防錆材」「防錆紙」「防錆シート」と呼ばれる、防錆効果がある物質を気化させて金属や非金属の腐食を抑制する製品のことです。
詳しくは下記の記事をご覧ください。
例えば私の保管方法を紹介すると、ストレートエッジの保管には防錆シートを適当な大きさにカットし袋状に成形して、使用後は毎回被せて木箱に入れて保管しています。
防錆効果には期限があるので、1年に1回くらいの定期的な交換が必要になりますが、錆ることを考えればやったほうが良いです。
ポイントまとめ
それでは、測定工具の錆について重要なポイントをまとめておきます。
ポイント
- 測定工具は汗で錆びる
- 錆の対策で重要なことは、使用後に炭化水素系の洗浄剤で徹底的にクリーニングすること
- クリーニングができたら、防錆剤を塗布して防錆効果がある製品を使って保管する
以上3つのポイントです。
*東洋化学商会のクリーナーAの購入はこちらから(金属の洗浄剤です)
*モリコート スーパーグリスの購入はこちらから(防錆潤滑剤です)
錆については下記の記事でまとめいます
関連記事:【測定器/工具 /電動工具】
以上です。