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【精度測定/精度調整】

内径測定でひずみ穴を判別する【等径ひずみ円はホールテストで良否】

2022年4月6日

 

今回は「内径測定でひずみ穴を判別する」についての記事です。

完成品の部品の内径を測定していると、内径の寸法以外に発覚する問題があります。それは、穴のひずみです。ひずんだ穴は測定したときに判別できるときもあれば、判別できないときもあるので非常に厄介です。

と言いますのは、穴のひずみには大きく分けて「楕円」と「等径ひずみ円」、そしてその中間的なひずみの穴もあるからで、このようなひずんだ穴は測定器を使い分けないと判別が難しいのです。

そこで今回の記事では、ひずんだ穴を測定する方法について内側マイクロメーターとホールテストを取り上げてまとめておこうと思います。

 

ひずんだ穴を測定する方法

内側マイクロメーターの落とし穴

部品の精度を測定するときに、測定箇所が「穴」の場合、基本となるのが内側マイクロメーターによる測定です。内側マイクロメーターは低価格で汎用性が高く0.01mm単位以下の測定が可能なので、外側マイクロメーターと同様に測定の定番と言える測定器です。

参考

*マイクロメーターについてはこちらの記事で紹介しています

要チェック
マイクロメーターの精度
マイクロメーターの精度と注意点【種類はいろいろあります】

続きを見る

 

ところが、内側マイクロメーターでの測定には、とんでもない落とし穴があります。

 

内側マイクロメーターの落とし穴

  • 楕円の測定はできるが、等径ひずみ円の測定はできない

 

出典:ミツトヨ 内径測定器 キャリパー形内側マイクロメーター カタログ

マイクロの写真

 

先日こんなことがありました。

製作品のベアリングホルダーの穴の精度を内側マイクロメーターで測定したら、図面通りの測定値だったのでベアリングを組付けようとしたのですが、ベアリングが入りませんでした。

穴の円周上の位置のどの位置で測定しても寸法がでているのですが、ベアリングが入らないのです。

 

ベアリングホルダー

穴にベアリングが入らない

 

結論を言いますと、ベアリングホルダーの穴はひずんでいました。

そうなんです、内側マイクロメーターやシリンダーゲージのような、2点接触の測定では穴のひずみが分からないことがあるのです。普通は、ひずんでいたら内側マイクロメーターでの測定で分かりそうなのですが「ひずんでいるけど、直径の寸法がでている穴」の測定は不向きなのです。

 

厄介な「等径ひずみ円」

穴を測定するときに厄介なのは、直径は等しいがひずんでいる「等径ひずみ円」です。

等径ひずみ円は、2点測定したときにどの部分を測定しても、同じ直径寸法を示す形をしています。

極端な例を挙げると、ルーローの三角形と呼ばれる、正三角形をおにぎり形にした定幅図形は、どこの部分を測定しても直径は同じ値を示します。

 

ルーローの三角形

ルーローの三角形を2点測定すると、どこを測定しても同じ値になってしまう

ルーローの三角形のイメージ図

楕円を2点測定すると、測定値に明確な差がでるので内側マイクロメーターで判別可能です

等径ひずみ円のイメージ図

 

実際には、加工された部品がルーローの三角形のような極端な形状をしていることは殆どないので、見た目ではひずみを判断することはできません。

 

ひずんだ円

実際には微妙にひずんでいることが多いです

ひずみ円のイメージ図

 

ホールテストで等径ひずみ円を測定する

私が実践している等径ひずみ円の穴を測定する方法はコレです

  • 3点式ホールテストで測定する

 

等径ひずみ円は2点測定ではなく3点測定で判別可能なので、3点式ホールテストで測定します。

*因みにですが、穴径を数値化せずに、真円の良否を判断するときは「ピンゲージ」で検査するのもアリです。

 

参考

*ホールテストについてはこちらの記事で紹介しています

要チェック
内径測定のホールテスト
ホールテストの解説【内径の測定ができる測定器を比べる】

続きを見る

 

3点式ホールテストの測定は3点測定なので安定していて、内側マイクロメーターよりも測定し易い測定器ですが、測定にはポイントがあります

 

3点式ホールテストの測定ポイント

  • 1か所測定ではなく、円周方向に回転させて数か所測定する

 

数か所測定したときに、「すべての測定値が同一」であれば真円です。もし「測定位置を変えたら測定値に差がある」場合は真円ではありません。内径の最小と最大の差がひずみと言うことになります。

 

出典:ミツトヨ Ⅱ形ホールテスト カタログ

ミツトヨのホールテストのカタログ

 

さて、ここまでの話しですが、2点測定の内側マイクロメーターは全然ダメな測定器で、ホールテストの方が優れているってイメージを持たれたかもしれませんが、実はホールテストにも落とし穴があるんです。

 

ホールテストの落とし穴はコレです

  • ホールテストは「等径ひずみ円」の判別はできるが、「楕円」の判別は苦手

 

ホールテストで楕円の穴を測定すると、測定値に差が表れないことがあります。これは3点測定の欠点なのです。その逆に、2点測定だと楕円は測定値に表れるので判別が可能となります。

となると、より正確性を求める時、ひずみを確実に発見したいとき、には2点測定と3点測定を併用する方法が確実ですね。とは言っても、測定器をそろえるコストや測定時間を考えると現実的な方法ではないかもしれません。このあたりは、自分の環境に合わせた測定方法と品質管理を確立させるしかなさそうです。

 

楕円

楕円の場合は直径に差があるので2点測定で判別可能ですが、3点測定では判別が難しいです。

等径ひずみ円

 

ポイントまとめ

それでは、「内径測定でひずみ穴を判別する」について重要なポイントをまとめておきます。

 

ポイント

  • 穴径を測定したときに、寸法が出ていても真円だとは限らない
  • 内側マイクロメーターは楕円の測定い向いている
  • 3点式ホールテストは等径ひずみ円の測定に向いている

 

以上3つのポイントです。

 

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以上です。

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