アルミフレームを組立てる時に必要なナットの使い分けとして、剛性重視の場合は「先入れナット」を使用、カバーなどの最低限の剛性と精度が必要ない部分は「後入れナット」を使用、と言った使い分けをされることが多いですが、さらに言えば「後入れナット」には種類が多いので後入れナットの使分けも考える必要があります。
組立し易い後入れナットは「バネナット」です
ボールタイプのバネナットがおすすめ
ミスミのアルミフレーム用の後入れナットにはいろいろな種類がありますが、どれを使えば良いのか迷ってしまいますね。
ナットの選定には客先の仕様や使用条件を一番に考えなければなりませんが、特に制約がない場合は組立作業がし易いナットを選んだ方が良いです。
組立作業がし易い後入れナットはコレ
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後入れバネナット
後入れバネナット
後入れバネナットはボールの中にスプリングが仕込まれているナットです。
ナットはアルミフレームの溝を滑ってズレてしまうので、ストッパとか滑り止めと呼ばれる機構が付帯されたタイプを使用するのが一般的ですが、種類が多いのでどのようなタイプを使用するのか?によって作業性が変わってきます。
「組立作業がし易い後入れナット」と言う意味では、上記写真のボールとバネによる滑り止めが付帯された「後入れバネナット」がおすすめとなります。
おすすめの理由
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指の力で簡単に入れられる
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溝から外すときに方向を気にする必要がない
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適度な抵抗がありナットの位置変更が楽です
後入れナットの基本として「アルミフレームに入れる」「アルミフレームから外す」作業がありますが、後入れバネナットはダントツに簡単で楽です。指の力で簡単に入れられて、もし溝から外す場合はナットの方向を気にしなくても外すことが出来ます。
アルミフレームの溝に入れた後に「ナットの位置変更」をする場合も、ボールタイプなので滑りが良くて適度な抵抗で位置を保持してくれます。
このようなメリットは、その他の後入れナットよりも優れていると思っています。
デメリットを挙げるとすれば「タップの位置がナットの中心ではなくオフセットしている」ことです。例えばですが、アルミフレームに取付ける部品の穴ピッチが狭く、ナットのタップのピッチが広い場合は取付けが出来ません。ナットを入れ替えてタップのピッチを狭くすればOKなので、プチトラブルって感じですが気を付けたいポイントです。
参考
先入れナットと後入れナットと違いについては下記の記事をご覧ください
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アルミフレームのナットの使分け【先入れナットと後入れナット】
続きを見る
後入れナットの種類まとめ
ミスミのアルミフレーム用の後入れナットにはいろいろな種類があります。
その中でも、ストッパとか滑り止めと呼ばれる機構が付帯された後入れナットを紹介します。
代表的な後入れナット
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後入れバネナット
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板バネ付き後入れナット
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後入れナット・ストッパセット
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後入れロックナット
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板バネ付後入れロックナット
私がおすすめするのは前述の通り、「後入れバネナット」です。もう説明はいりませんね。
出典:ミスミ アルミフレーム用後入れナット 仮止め機能付 (21年6月時点のカタログ)
後入れバネナット
では次に、「板バネ付き後入れナット」のご紹介、
このナットは後入れバネナットよりも「位置の保持力が強い」「1個当たり約5円安い」メリットがありますが、デメリットとして「溝に入れる時に結構な力が必要なので指が痛くなる」「溝から外す時に方向を間違えると板バネが引っかかる」があります。なので作業には細い六角レンチを使って「溝に入れる」「溝から外す」と言った工夫が必要になります。
出典:ミスミ アルミフレーム用後入れナット 仮止め機能付 (21年6月時点のカタログ)
板バネ付き後入れナット
スタンダード後入れナットにストッパをつけ足して使用する「後入れナット・ストッパセット」のご紹介。
スタンダードの後入れナットにはストッパとか滑り止めと呼ばれる機構がありません。そのため、アルミフレームの溝にあらかじめ「樹脂製」または「金属製」のストッパを入れておき、その後スタンダード後入れナットを入れて位置保持させます。
このナットの特徴は「バネナットより溝に入れやすいが後入れバネナットよりも入れにくい」「ストッパを溝に入れるときに変形させてしまうことがあり変形すると位置保持しない、スライドしない、ことがある」「ストッパを溝から外すと変形してしまうので再使用できるかあやしい」「別々の部品なので、どちらかを紛失させると最終的に数が合わなくなる」「溝に入れる作業が×2回になので面倒」などがあり、あまりいい印象はありませんのでお勧めしません。
出典:ミスミ アルミフレーム用後入れナット 仮止め機能付 (21年6月時点のカタログ)
後入れナット・ストッパセット
「後入れナットロックナット」はスタンダード後入れナットに「止めねじ」をつけ足したタイプです。
滑り止め機能がないので溝にナットを入れた段階ではスルスル動いてしまいますが、任意の位置で止めねじを締付ければ余程の負荷を与えない限り動きません。なので、部品の脱着があるような場合などナットの位置を完璧に固定したい場合におすすめです。
デメリットは、あらかじめナットの位置をメジャーで測定してケガいておき、図面通りの位置で止めねじを締めて固定する必要があるので作業の手間が多いことです。アルミフレーム同士の組立だけならわざわざ使うようなナットではないですね。
出典:ミスミ アルミフレーム用後入れナット 仮止め機能付 (21年6月時点のカタログ)
後入れロックナット
後入れロックナットに滑り止め機能を付帯したのが「板バネ付き後入れロックナット」です。
滑り止め付きなので組立中にナットを勝手に動いてしまう心配がないので作業性が向上しています。ただ、後入れロックナットと同様に、完璧に固定したい理由がないのなら使う必要がないナットです。ちなみに価格は後入れロックナットよりも「1個当たり約10円」高いです。
出典:ミスミ アルミフレーム用後入れナット 仮止め機能付 (21年6月時点のカタログ)
板バネ付後入れロックナット
参考
*止めねじについてはこちらの記事で紹介しています
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止めねじの種類と使い方まとめ【ホーローセットやイモネジの先端規格】
続きを見る
単価と組立性の一覧
それでは後入れナットの単価と組立性を一覧でまとめてみます。
単価と組立性の一覧
ミスミの6シリーズ、材質S10C相当のナットで比べてみました。組立性は私の独断の採点で3点が最高位です。単価は2023年8月のミスミカタログ記載の価格です
簡単に説明すると、、、
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組立性が一番良いのは「後入れバネナット」
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価格を抑えたいのなら「板バネ付き後入れナット」を選択する
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「後入れナット・ストッパセット」は特別な理由がなければ使用する必要なし
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ナットを完璧に固定する場合は「後入れロックナット」を使用する
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「板バネ付き後入れナット」は高価なので、基本使用しない
と言うことになりますね。
多分ですが、ミスミ以外のアルミフレームメーカーの「イマオ」「アルファ」「SUS」「ボッシュ」などの後入れナットにも共通して言えるのではないかと思うので、参考にしてください。
*アルミフレームの購入はこちらか
*後入れナットの購入はこちらから
関連記事:【フレーム/カバー】
以上です。