測定と調査の結果をエクセルでデータ化するためには、「必要項目のフォーマット化」「数値は表とグラフで表わす」「文章は箇条書きと長文を使い分ける」「再現性と信頼性がある内容であること」の4つが必要なことだと思っています。
記事の目次
測定と調査の結果をデータ化するポイント
調査または測定したらデータ化する
機械組立に必要なスキルに「測定」または「調査」をおこない「データ化する」があります。
測定は「モノ状態を数値化」することであり、測定の結果から「今の状態を数値で評価できる」ようになります。これは客観的な判断をするために必要なことです。
調査は不良/不具合が発生したときに、「あるべき姿(設計値/基準値/目標値/サンプル)」に対して「現状の姿」を比べて原因を特定/推論することであり、不良/不具合をどうやって対策/改善すればいいのか?検討するために必要なことです。
そして最後に、「測定」または「調査」をおこなったら、エクセルで測定の結果、調査の結果を「データ化」します。*理想は測定/調査と同時進行でデータ化することです。
測定、調査、をデータ化する効果
-
報告書として活用できる
- 結果を整理して見えやすくできる
-
第三者と一目瞭然の情報を共有できる
-
記録(資料)として残すことができる
-
表とグラフによって詳細に分析ができる
測定も調査も一番怖いことは「判断を間違える」ことなので、データ化によって多くの人と正確な情報を共有でき、詳細な分析ができるメリットは絶大です。
測定は難しい
測定って難しいと思います。いつ(時間天候)、誰が、どこで、どの測定器で、どこの部分を、どのような測定方法で、測定するのか?によって測定値が違ってくるからです。しかも、自分ではバッチリ測定できたと思っていても、後々になって「つじつまが合わない=矛盾」なんてことがあります。
私的には、正しく測定できること、最適な測定器を選択できること、最適な測定方法を考えられること、の3つが普段の組立作業で意識で来ていれば自然と測定スキルは上達すると思っています。
データ化するときのポイント
測定結果や調査結果をエクセルでデータ化する、、、、、それってどうやってやればいいの?って話しなのですが、私が考えるデータ化するときのポイントを紹介します。
データ化するときのポイント
以上の4項目ができていれば、データとして成立する最低ラインはクリアしていると思います。
次項から解説していきます。
データ化するポイント解説
必要項目のフォーマット化
「測定」「調査」をおこない「データ化する」するための準備として、必要な項目をフォーマット化しておきます。
結構ありがちなのですが、データ化したのはいいが「必要な項目が抜け落ちている」ことによって、再度「測定」「調査」が必要になったり、データ化した資料の再現性や信憑性が低くなることがあるので、そうならないために必要項目はフォーマット化しておきます。
必要な項目一覧
-
いつ
-
だれが
-
調査の概要(目的)
-
測定方法
-
測定条件
-
測定器具
-
測定図
-
測定結果(測定値)
-
測定結果のグラフ
-
測定結果からわかること
-
対応/対策
-
結論
このような項目をエクセルでフォーマット化しておき、必要に応じて項目を「減らしたり」「増やしたり」「変更したり」すれば、効率よくデータ化できます。
必要な項目のサンプル
もし、「測定」「調査」が複数件ある場合、複数の「測定」「調査」の結論を一つにまとめる場合は、シートごとにデータを分けます。
シートごとにデータを分けるコツ
-
先頭のシートに各シートをまとめた結論を書く
-
「測定」「調査」が複数ある場合は、各シートごとにデータ化する
シートごとにデータ化する
エクセルの下側にシートの表示があります。こんな感じで、各シートに名前を割り付けて、それぞれに分けてデータ化するわけです。
数値は表とグラフで表わす
測定や調査で得られた数値は、「表にまとめる」「知りたい数値は関数を使って算出する」のが基本です。グラフに関しては、表だけで理解できれば必ずしも必要ではないですが、「数値をイメージで捉えたい」「変化を予測したい」「傾向をつかみたい」場合にはグラフは有効です。
数値を表で表すメリット
-
数値を項目別に整理することで見やすくなる
-
数値をエクセル関数で計算することで傾向や合否が分かる
グラフで表すメリット
-
将来の数値の変化が予測できる
-
数値同士の関連性を調べられる
-
傾向やパターンが把握しやすくなる
-
視覚的に数値の変化を捉えることができる
表とグラフのサンプル
サンプルとして簡単な表とグラフを作ってみました。
数値を表にまとめることは難しくはありませんが、そこから「知りたい値を関数を使って算出し、算出した結果からどう判断するのか?」と言うことは難しいです。測定/調査の目的や基準値がはっきりしていないと、なにをどう計算すればいいのか?分からないからです。もし、何をどうすればいいのか?分からなければ、とりあえず「最大値」「最小値」「平均」「標準偏差」を算出しておくのもいいかもしれません。この4項目は機械の評価ではよく使われます。
次にグラフについてですが、数値から何をしりたいのか?によってグラフの種類を使い分ける必要があります。グラフの使い分けは、総務統計局で公開されている「なるほど程統計学」が参考になります。
出典:総務省統計局 なるほど統計学
グラフの種類
- 絵グラフ:同形の絵を並べ、量の大小を比較する。
- 棒グラフ:棒の高さで、量の大小を比較する。
- 折れ線グラフ:量が増えているか減っているか、変化の方向をみる。
- 円グラフ:全体の中での構成比をみる。
- 帯グラフ:構成比を比較する。
- ヒストグラム:データの散らばり具合をみる。
- 箱ひげ図:データの散らばり具合をみる
- パレート図:全体に対する各項目の構成比の集中度合いをみる。
- ローレンツ曲線:集中の度合いをみる。
- レーダーチャート:複数の指標をまとめてみる。
- 散布図:2種類のデータの相関をみる。
- バブルチャート:2つの変量の相関関係に加えて円の面積で3つ目の変量をみる。
- 統計地図:地域別の比較をする。
参考
*この記事と合わせて読みたい
-
機械装置の評価と分析【標準偏差と正規分布で確率を求める】
続きを見る
文章は箇条書きと長文を使い分ける
測定結果や調査結果を、誰が読んでも誤解なく分かりやすくするために、文章は「箇条書き」と「長文」を使い分けることが大切です。
私の使い分けを紹介すると「条件」「方法」「結果」などの「簡潔な情報」は箇条書き、「発生状況」「結論」のような「複数の情報が絡み合っていて、また詳細説明が必要な場合」は長文です。
とは言えですが、そもそもデータ化は慣れないうちは難しいので、簡単に情報を表せる「箇条書き」を基本とするのがおすすめです。やり方次第では、長文が適している説明を箇条書きでまとめることも可能なので、まずは箇条書きがスラスラと書けるようにしましょう。
伝えたい情報の基本
-
「短文の箇条書き」で情報をまとめる
短文の箇条書きのメリットは、要点がストレートに伝わるので誤解を生みにくく、内容が素早く理解できることが挙げられます。そしてデータを作る側としても、文章を考える手間が軽減されるので、素早く誤解がない文章を作れるメリットがあります。*私の感覚では箇条書きは30文字以下が適していると思います。
箇条書きのサンプル
長文の場合は、複数の情報が絡み合っていて、また詳細説明が必要な場合に適しているのですが、普段の業務の中で文章の読み書きをしていない人にとっては難しいと思います。正直、現場側の私は全く自信がありません。
長文のコツ
-
主張が明確であること
-
根拠があり理屈が成り立っていること
まず1点目は「主張が明確であること」です。文章を書いていると、いつの間にか脱線してしまい「何を言いたいのか分からない」ってことはありがちです。やるのか、やらないのか、もしどうしていいのか分からないのならば「わからない」と主張することです。
2点目は「根拠があり理屈が成り立っていること」です。長文だと、ついつい感情的な文章になりがちなので、信憑性や説得力に欠けてしまいます。そのため、測定結果、調査結果、規格、過去のデータ、仕様、設計上の計算値、などの根拠となる情報を盛り込み、その情報を組合わせた理屈で文章を構成することです。
もし、長文を書くことに自信がなければ、箇条書きを駆使して書くことにしましょう。
箇条書きと長文の違いのサンプル
サンプルとして、3パターンの結論をchatGPTに作ってもらいました。言っていることは同じなのですが、文字数が全然違います。
一見すると、文章が長い方がぱっと見のボリュームがあって、やった感がありますが、それではただの自己満足です。測定結果、調査結果、をデータ化することにおいて、文章の長さは評価されません。大切なことは「第三者と一目瞭然の情報を共有できる」ことなので、私がおすすめするのは「結論を箇条書きで表す場合」と「結論を適度な長文で表す場合」のような文章です。
参考
*この記事と合わせて読みたい
-
なぜ結論は一番初めに書くのか?【結論を伝える3つのテクニック】
続きを見る
再現性と信頼性がある内容であること
「測定」「調査」の結果をデータ化する上で、私が意識していることは「データの再現性」と「データの信頼性」の2つです。
まず初めに、データの再現性について。
データの条件と同じ条件で測定、調査したときにデータと同じ結果が得られなければ、再現性がないことなり、使えないデータとなってしまいます。そうならない為に、データに必要な情報が抜けなく網羅されていること、また、条件そのものが正確で最適になっていることを確認します。
次に、データの信頼性について。
「データの中身がウソ、偽り、改ざん、をおこなっていない」ことがデータの信頼性が高いと言えます。測定器具の誤差なども信頼性に関わりますが、それは測定した時の話しなので、データ化する上での信頼性とは切り離して考えます。
これは本当に、あってはならない事なのですが、「測定」「調査」の結果をデータ化する際に「入力で数値を間違える」「自分が望む結果になるように数値や条件を書き換える」と言うようなことが、起きてしまうことがあります。私の場合、なかなかいい方向性が見いだせない測定、調査の場合、精神的に苦しすぎて「改ざんしちゃえば?」って頭をよぎることがあります。でも、そんなことをすれば、、、、全てが終わります。そのため、数値はリアルなそのままの数値を必ず使用するように、「何度も確認」「何度も自分に注意」しています。
このような理由があるので、「再現性」と「信頼性」はデータ化するときに、いつも頭の片隅に置いておきましょう。
参考
*この記事と合わせて読みたい
-
設備に不具合が起きたら客先の評価は上がります【数値をデータ化して客観的判断】
続きを見る
ポイントまとめ
それでは、測定と調査の結果をエクセルでデータ化する、について重要なポイントをまとめておきます。
ポイント
- 測定」または「調査」をおこなったらエクセルでデータ化すること
- データ化の目的は、多くの人と正確な情報を共有し、詳細な分析をするため
- データ化のポイントは「必要項目のフォーマット化」「数値は表とグラフで表わす」「文章は箇条書きと長文を使い分ける」「再現性と信頼性がある内容であること」の4つ
以上3つのポイントです。
*数値、データの考え方、使い方、を学ぶのに最適です
*グラフの使い分け、分析方法、を学ぶのに最適です
関連記事:【機械組立の心構えと基本】
以上です。