当ページのリンクには広告が含まれます

【シール要素】

開放形ベアリングはニロスリングで簡単に異物対策【アンギュラとテーパ】

2021年4月3日

 

今回は「開放形ベアリングにはニロスリングで簡単に異物対策」についての記事です。

ベアリングを使用した軸受けユニットの多くはグリスがあらかじめ封入されているシール形ベアリング、シールド形ベアリングが使用されています。ですが、なかには開放形と呼ばれるグリスが封入されておらずシールがないタイプのベアリングを使用することもあり、そのようなベアリングにはオイルシールやニロスリングと言った密封部品を別途取付る必要があります。

そこで今回の記事では、密封部品のニロスリングに焦点をあてて、シールの仕組みから特徴や注意点をまとめておこうと思います。

 

開放形ベアリングにはニロスリングで異物対策

シールがないベアリング

ベアリングは軸の支持と回転の役目を担う軸受けのことで、内部にコロ(球、ボール)が入っています。コロはベアリングの外輪(アウターレース)と内輪(インナーレース)と保持器に接触しながら回転するので、潤滑剤(オイルやグリス)が欠かせません。

中でもグリス潤滑で使用するベアリングは、異物混入やグリスの流出を防ぐために、シール(樹脂ゴム)やシールド(金属板)やオイルシールと呼ばれる密封部品を取り付けて使用するのが基本となります。

 

シールドありとシールなしベアリング

シールドありとシールなしベアリング

 

グリス潤滑のベアリングの定番と言えば、シール形ベアリング、シールド形ベアリングと呼ばれるベアリングにグリスが封入されているメンテナンスフリータイプですが、開放形と呼ばれるシールがなくグリスが封入されていないベアリングをグリス潤滑で使用することがあります。

 

例えばこんなベアリング

  • テーパーベアリング
  • アンギュラベアリング

 

テーパーベアリングとアンギュラベアリングは一部を除き、基本的には開放形のベアリングです。

このような、開放形ベアリングをグリス潤滑で使用する場合は、密封部品が別途必要になります。

 

ニロスリングで異物対策

開放形ベアリングをグリス潤滑で使用する場合、良く知られている密封部品にオイルシールがありますが、それ以外にもこんな部品があります。

 

  • ニロスリング

 

ニロスリングとは開放形ベアリングだけでなく密封形ベアリングにも使用できる、非接触式のベアリング密封部品で、比較的簡単な構造で密封することができます。

 

ニロスリングの見た目

ニロスリング 表側 外側

ニロスリング

ニロスリング 裏側 ベアリング側

ニロスリング

 

取付けは、異物混入やグリスの流出をさせたくないベアリングの面に、ニロスリングを別部品で押し付けたり挟み込むことでベアリングに密着させて使用します。

ニロスリングは平坦な面ともっこり山形な空間になっている部分がありますが、押し付けるのは平坦な面ですので、取付けや取扱いには注意してください。

 

ニロスリングの取付け例

ニロスリング

 

シールの仕組みと特徴

ニロスリングの密封の仕組み

ニロスリングの見た目は「成型された、ただの板」なので、こんなものが何でシール効果があるの?って思うかもしれませんね。

 

ニロスリングのシールの仕組み

  • リップ(山形部分の端面)がベアリングの外輪または内輪に接触して溝を形成することでシールされる

 

シールの仕組み

ニロスリング

溝のイメージ図

ニロスリングの仕組み

 

ニロスリングの材質はバネ鋼なので、ベアリングに適度なテンションでリップが接触し回転するので接触部分が摩耗して0.01mm単位の溝ができます。

溝にはリップが入り込む形になるのでラビリンス効果によってシールされる仕組みです。

 

出展:福田公易株式会社 ニロスリングカタログ

摩耗してできた溝の写真

ニロスリングによる溝

 

ニロスリングの特徴と注意点

ニロスリングの特徴と注意点をまとめておきます

 

ニロスリングの特徴まとめ

  • 省スペースに取付ができる
  • 簡単な構造で取付けができる
  • 非接触シールのため回転抵抗は少ない
  • 開放形ベアリング、密封形ベアリング、の両方に使用できる
  • シールタイプは、内輪側シール(内輪に溝)と外輪側シール(外輪に溝)がある
  • 代表的な取付け方法は「ハウジングキャップによる押し付け」と「ナットの締付けによる押し付け」がある

 

 

注意点

  • 溝の形成のため慣らし運転が必要
  • オイルシールよりも防塵性、耐水性が劣る
  • グリスから分離したオイルが漏れることがある
  • 変形しやすいので、圧入の場合は圧入治具を使う
  • 平坦な面(シール面)を押さえつける構造が必要
  • 1°以上調心(傾く)するベアリングには使用できない
  • グリスはベアリングだけでなく、ニロスリングの空間にも封入する

 

ニロスリングの組付けポイント

グリスの封入

ニロスリングを使用したベアリングを使用する場合、何と言ってもグリスの封入は絶対に欠かせないので、再確認しておきます。

 

グリスの封入のポイントはコレです

  • ベアリングは手のひらでグリスを押し込んで封入する
  • ニロスリングのベアリング接触面の空間にヘラでグリスを詰める

 

グリスがきちんと封入されていないと、潤滑切れで寿命が短くなってしまいますので、基本に忠実に作業をしましょう。

 

グリスを詰める方法の紹介

ベアリングは手のひらでグリスを押し込む

グリスの封入

ニロスリングの空間にヘラでグリスを詰める

グリスの封入

 

参考

開放形ベアリングのグリスにグリスを詰める方法を紹介している記事

要チェック
手作業でベアリングにグリスを入れる方法
手作業でベアリングにグリスを入れる方法【手のひらで押し込む】

続きを見る

 

開放形ベアリングのポイントまとめ

それでは、開放形ベアリングについて重要なポイントをまとめておきます。

 

ポイント

  • 開放形ベアリングのグリス潤滑にはオイルシールとニロスリングで密封することが出来る
  • ニロスリングは非接触式の密封部品で、省スペース、単純構造、で取付けができる
  • グリスはベアリングだけでなく、ニロスリングの空間にも詰めること

 

以上3つのポイントです。

 

参考

 

関連記事:【シール要素】

以上です。

-【シール要素】
-,