今回は「機械装置に汎用性のあるシムを活用する」についての記事です。
機械装置の組立をおこなっているとシムで精度調整をおこなう作業があります。どれほど部品の精度を上げても、誤差は必ず生まれますのでシム調整は欠かせないのです。ところが、シム調整をする部品は様々な大きさや形状があるので、それに合わせたシムを用意するのに少々手間があります。
そこで今回の記事では、どのような状況でも対応できるように汎用性を持たせたシムについて話しをしようと思います。
シムが必要な状況
*シムの基礎情報についてはこちらの記事をご覧ください。
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シムで機械の精度を調整をする【シムの材質と形状と厚さを決める】
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シムは機械装置の精度出しに欠かせませんが、シムで精度調整するときには2つの状況が考えられます。
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事前に分かっている場合
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必要に迫られて調整する場合
前者の場合は、設計段階でシム調整有りきの話ですので部品手配の時に最適なシムを購入しておく事ができます。(数量が多すぎて余ったりサイズや厚さを間違えて廃棄になることがあります)
ところが、後者の場合には想定していないのでどのような形状のシムでどれくらいの厚さが必要になるかは、やってみないと分からないと言う事になります。
私の場合はほとんどが後者となります。では、必要に迫られて調整作業する時に困らないようにできる事を考えたいと思います。
例えばこのようなやり方があると思います。
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専用シムを各種用意しておく
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汎用性の高いシムを用意しておく
これらの方法についてさらに考えてみます。
汎用性のあるシムを使いこなす
専用シムを各種用意する
専用シムにはどのようなモノがあるでしょうか?
*専用シムと考えられるモノ
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部品に合わせたの専用形状
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内径/外径が指定できるシムリング
出典:株式会社岩田製作所 シムリング
まず部品に合わせた専用形状のシムは部品の形状がいつも同じであれば良いですが、そうでない場合はシムの形状を確定させることが出来ないので「各種用意する」と言うのは現実的ではありません。
次にシムリングですが、内径/外径の指定の仕方ではある程度は応用が利きます。内径は使用するねじサイズ、外径は大きすぎると部品からはみ出てしまうこともありますので外径=内径+内径÷2程度が良いと思います。
使用頻度の高いねじサイズで使用頻度の高い厚みを各種用意する事が出来ると思います。ただ、シムリングは高価ですので使用するか分からないのに在庫しておく意味があるのか?と言われると難しいかもしれません。
汎用性の高いシムを用意する
汎用性の高いシムには何があるでしょうか?
*汎用性の高いシムと考えられるモノ
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シムロール/シムプレート
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切欠きシム
シムロール/シムプレートは作業者が自分でカットして使用するタイプですので、これ以上に汎用性のあるシムはありません。
困った時にはどうにでもアレンジできるのでシムロール/シムプレートは各厚みをそろえておくと非常に便利です。ただ、自由自在にシムを作る事が出来る反面、必要な時に毎回カットする必要があるので少々面倒に感じる事があるかもしれません。
出典:株式会社岩田製作所 シムボックス
切欠きシムは部品への挿入が容易で作業性がよく、接触面積が大きくとれるのでねじが入る部分をラフにしておけば汎用性があります。例えば、M6~M10まで同じ形状の切欠きシムで対応する事も可能だと思います。
そうする事で形状は固定で厚みを各種用意すれば良いので準備しておく事ができます。ただ、ねじが入る部分がラフな為に緻密な精度調整やバラス可能性がある部分には向いておらず、逆に部品の骨格となる柱などの構造物の精度出しには最適です。
出典:株式会社岩田製作所 ベース用シム
おすすめのシムはコレ!
どのようなシムを用意しておけば良いか考えてみましたが、その結果私が用意しているシムはシムリング、シムロール、切欠きシムの3種です。
*私が用意しているシム
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シムリング・・・≪内径6mm×外径10mmの厚さ0.02/0.05/0.1/0.3≫ ≪内径8mm×外径12mmの厚さ0.02/0.05/0.1/0.5≫ ≪内径10mm×外径15mmの厚さ0.1/0.2/0.3/0.5/1.0≫
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シムロール・・・厚さ0.05/0.1/0.2/0.3/0.4/0.5の6種類で材質は真鍮。自由自在にカットして使用できるのが最大の強み
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切欠きシム・・・厚さ0.5/1.0/1.5/2.0の4種類で材質はステンレス。0.5以下はシムロールを切欠きシムの形状にカットして使用する
このようなシムで対応が難しい状況では、専用形状のシムを製作したり最適サイズのシムリングを購入したりしています。その場合には、シムが入荷するまで時間がロスとなりますが全てを予測してシムを準備しておくことは難しいと思います。
ただ上記のようなシムを用意するようになってからはシム調整の作業の80%は用意しているシムで賄えるようになっています。ですから、ある程度予測して用意してする効果はあったと思います。
ポイントまとめ
それでは、汎用性のあるシムについて重要なポイントをまとめておきます。
ポイント
- 設計段階で手配するシムは廃棄になることがある
- 汎用性があるシムを準備しておくと良い
- おすすめはシムリング、シムロール、切り欠きシム
- 一番汎用性があるのはシムロール
以上4つのポイントを覚えておきましょう。
*シムリングの購入はこちらから
*シムロールの購入はこちらから
*切欠きシムの購入はこちらから
関連記事:【精度測定/精度調整】
以上です。