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数もの部品は品質が低下して不良が発生する
オーダーメイドの機械装置メーカー
普段、エンドユーザーの仕様書にもとづいて、オーダーメイドの機械装置を作っているメーカーさんは多いのではないでしょうか。
私も会社員の時は、そうした機械装置の製作に携わっていました。
オーダーメイドの機械装置では、使用する部品も装置ごとに専用設計されていることが多く、同じ部品を製作するとしても、せいぜい数点から十数点程度です。
普段からこのような環境で仕事をしていると、それが当たり前になっています。
「同じ部品を何百個も作る」ということは、あまりありません。
そんなある日、過去に製作した機械装置のコンセプトをそのままに、大幅な規模アップと改良を加えた機械装置を受注することになりました。
今回の機械装置には、ワークをストックするための棚があり、その棚には全く同じユニットを150台並べる構成になっていました。
それぞれのユニットにワークを格納するシステムです。
ここまで聞いても、当時は特に何とも思っていませんでした。
「同じユニットを150台作る」といっても、基本的には同じものを繰り返し製作すればいい。
私は、そんな程度に考えていたのです。
ところが、実際に製作が始まってみると、これまで経験してきたオーダーメイドの機械装置とは、少し勝手が違いました。
同じものを大量に作るということが、思っていた以上に大きな意味を持っていたのです。
試作品を製作して検証する
同じユニットを150台作ることになったのですが、ワークを取り扱うユニットであるため、一部の部品には直角度や寸法精度で1/100mm台の公差が要求されていました。
つまり、単純に「同じ部品を150個作ればいい」というわけではありません。
精度が必要な部品を、しかも大量に、同じ品質で作り続ける必要があります。
数もの部品を製作するにあたって重要なのは、
- 同じ品質の部品を計画通りに作れる加工方法
- 加工時間を考慮した段取り
- 加工した部品の精度を安定させるための管理
などです。
そこで、いきなり150台分を製作するのではなく、まずは試作部品を製作して、精度や加工時間を検証することになりました。
数週間後、試作した部品が出来上がってきました。
まずは部品単品で精度測定を行います。
そして、部品単品の精度だけではなく、実際にユニットに組み立てた状態でも精度測定を行いました。
その結果、部品単品でも組立後のユニットでも、要求されている精度を満たしていました。
この結果から、
「この加工方法と精度であれば、150台作っても問題ないだろう」
という結論になりました。
加工時間についても、NCフライスの加工プログラムを工夫したり、段取り替えの方法を見直したりすることで、要求される品質とコストに見合う加工方法ができあがっていました。
試作の段階では、精度も問題ありません。
加工方法も決まりました。
これなら、あとは同じものを150台分作っていけばいい。
そう思っていました。
そして、それから3カ月後。
ついに、機械装置の組立が始まりました。
同じ部品を大量に作ったら精度不良が大量発生
続々と部品が入荷してきます。
組立作業も着々と進み、機械装置全体の組立は順調に進行していました。
そして、ついに150台分のユニットを構成する部品がすべて入荷してきました。
数もの組立では、1台目で組立方法を間違えてしまうと、その後の149台にも同じ問題が発生する可能性があります。
そうなると、あとから大量の手直しが発生し、途方もない後戻りが発生します。
そのため、1台目のユニットは私が組み立てることにしました。
図面の寸法を確認しながら、慎重に組み立てていきます。
そして組立が完了したところで、石定盤の上にユニットを置き、ハイトゲージやダイヤルゲージなどを使って、さまざまな寸法や直角、平行を測定しました。
ところが、測定を進めていると、最も重要な部品の数値がおかしいことに気付きました。
ユニットを測定してみると、
- ワーク受けの長さ300mmほどの部品が斜めに傾いている
- 片側をゼロ基準にすると、反対側が約5mmもズレている
という状態でした。
確認してみると、ワークを受けるための長さ300mmほどの部品が、明らかに斜めになっています。
片側を基準にするとゼロなのに、反対側では約5mmもズレている。
つまり、300mmの長さの中で、片側と反対側に約5mmもの高低差が発生していたのです。
今回要求されていたのは、1/100mm台の精度です。
しかも、事前に製作した試作品には問題ありませんでした。
それなのに、量産品では10mmという桁違いのズレが発生しています。
「これは何かの間違いではないのか?」
そう思い、念のため、さらに5台のユニットを組み立てて確認することにしたのだが、5台ともすべて同じ傾向の精度不良が発生していたのです。
そこで、精度不良の問題源を調べていくと、原因となっているのは、たった一つの部品であることが分かりました。
この部品にはシャフトが入る穴があるのだが、この穴が基準面に対して直角に空いていない。
製作図面の指示にある直角度をオーバーしていたのです。
しかし、この部品は、事前に製作した試作品では問題なかったし、問題ないから150個も製作したのです。
試作品は合格だったのに量産品はすべて不良だったのか
なぜ、試作部品の精度は合格だったのに、同じ部品を150個量産したら、すべての部品で精度不良が発生したのでしょうか?
結論を言うと、原因は突き止められませんでした。
なにせ、当時の私は平社員で、立場としてはテクニシャンのレベル1にすぎません。
精度不良について原因を追究したくても、社内で大きな発言力がある立場ではありませんでした。
しかも当時は、会社としても現在ほど不具合に対する管理や原因追究の意識が高くない時代でした。
上司や設計担当者に相談しても、「なんとかなりませんかね」と、まるで他人事。
社長に相談しても、「わかった」の一言だけ。
それ以上、具体的な指示や原因究明が行われることもありませんでした。
もう、後の祭りです。
ただ、量産時の状況について関係者から話を聞いていくと、加工時の状況が浮かび上がってきました。
そもそも、この部品は加工が難しい部品でした。
試作品を製作したときは、加工の責任者自身が「難しい部品だ」ということを十分に認識していました。
そのため、加工条件や作業方法に気を配りながら、かなり慎重に加工していたようです。
そして、完成した試作品についても精度を確認し、問題がないことを確認していました。
ところが、量産に入ると状況が変わりました。
加工の責任者が自ら慎重に加工するのではなく、オペレーターに加工を任せ、「とにかく予定数をどんどん作ってくれ」というような状態になっていたのです。
もちろん、オペレーターが手を抜いていたという話ではありません。
問題だったのは、難しい部品を量産するための加工条件や品質管理の仕組みが十分に整っていなかったことです。
さらに、量産した部品について、加工後の精度確認が全くおこなわれていませんでした。
つまり、「加工して、測定して、問題がなければ次を作る」という管理ではなく、「加工して、予定数を作る」ということが優先されていたわけです。
まとめると、当時の状況はこんな感じだったのです。
- そもそも加工が難しい部品だったため、試作品は加工の責任者が気合を入れて、相当慎重に作業をしていた
- 量産時はオペレーターに任せきりで、「どんどん作れ」という状況になっていた
- 加工後の部品の精度を測定・確認しておらず、オペレーターの作業状況についても十分に確認していなかった
これでは加工不良(精度不良)の原因がどこにあったのか?わかるわけありませんね。
ただ、すべての部品が同じ傾向の不良になっていると言うことは、加工方法、加工条件、段取りなど、すべての部品に共通している何かに問題があったことは確かでした。
どうやって精度不良を対応したのか
結局、精度不良が発生した150個の部品をどうするのか?
誰も具体的な対応を決めてくれません。
このままでは組立を進めることもできないため、仕方なく私の判断で対応方法を決めることにしました。
部品そのものを作り直すことは、納期やコストを考えると現実的ではありません。
そこで、部品の穴そのものの真直度を修正することはできませんが、部品の取付面との間にシムを入れ、ユニットに組み上げた状態で、穴が真っすぐになるように修正することにしました。
ユニットに組み立てたとき、ワークを受ける長さ300mmほどの部品が斜めに傾き、片側をゼロ基準にすると、反対側が約5mmもズレている状態だったものを、シムによって約0.5mmまで修正することにしたのです。
この部品の精度不良には傾向があり、理論上は、150個すべてに必要となるシムの厚みは、ほぼ同じになるはずです。
そこで、手が空いている社員と常駐していた外注さんを含め、4人でシムを大量に製作することにしました。
汎用の板のシムからパンチとハサミをつかってひたすらシムを作ります。
私はというと、出来上がったシムを使い、ユニットの組立に専念することにしました。
まず、ユニットを組み立てたら、石定盤の上で一つひとつ精度を測定します。
そこで必要な調整を行い、精度を確認したユニットから、機械装置の棚へ組み込んでいきます。
そして、ユニットを機械装置に組み込んだ後は、さらにオートレベルを使って測定します。
機内での取付状態を確認し、必要に応じて傾きを調整します。
つまり、
- シムを作る
- ユニットを組み立てる
- 石定盤で測定する
- 機内の棚に組み込む
- オートレベルで測定する
- 機内で調整する
という作業を、150台分繰り返していきました。
本来なら、加工された部品をそのまま組み立てれば終わるはずでした。
しかし実際には、加工段階で発生した精度不良を、組立工程で一つひとつ測定しながら修正することになったのです。
結果的に、かなりの手間と時間をかけて、なんとか150台のユニットを組み上げていきました。
このとき私は、身をもって実感したのです。
- 数もの部品は一度不良を出してしまうと、その影響は1個では終わらない
- 150個すべてが同じように不良になれば、その150個すべてに対して、何らかの対応が必要になる
- その対応を組立現場で行うことになれば、想像以上の時間と手間が必要になる
最悪の結果で最低な方法で精度修正した、、、一生忘れることがない出来事でした。
数もの部品を作るときに必要な精度管理
普段、数もの部品を作ることがない機械装置メーカーが、数もの部品を作ると大変なことになる。
今回の話は私の実体験であり、あくまでも一例にすぎませんが、私と同じような経験をしたことがある方もいると思います。
そこで今回の経験を踏まえ、普段、数もの部品を製作することがない方が、数もの部品を手配するときに注意したいポイントをまとめます。
- 量産開始前に、加工方法・加工条件・段取りを決める
- 量産開始したら、最初の数点は測定する
- 量産中も抜き取りで精度測定する
- 作業者が変わっても同じ品質になるよう、作業方法を標準化する
- 数ものだからと、コストダウンを意識しすぎないこと
- 部品の保管・運搬方法を決めておく
- 部品の取扱いや作業場のルールを決めておく
それでは次項から詳しく解説していきます。
量産開始前に、加工方法・加工条件・段取りを決める
数もの部品を製作する場合、いきなり本番の数量を加工するのではなく、まずは「この部品を、どうやって安定して作るのか」を検証しておく必要があります。
特に、加工が難しい部品や、寸法精度・直角度・平行度などに厳しい公差が設定されている部品では、なおさらです。
今回の部品も、試作品では加工の責任者がかなり慎重に加工することで、要求される精度を出すことができました。
しかし、量産では同じような条件で加工できていませんでした。
そのため、量産前に、
- どのような加工方法で加工するのか
- どの加工条件で加工するのか
- どのような段取りで加工するのか
- どのように測定するのか
といったことを、あらかじめ検証して決めておく必要があります。
試作品を「うまく作れた」という結果だけで終わらせず、「誰が作業しても同じ品質で作れる方法になっているのか?」まで確認することが大切です。
量産開始したら、最初の数点は測定する
量産が始まったら、最初に加工した数点を測定します。
ここで確認したいのは、単純な寸法だけではありません。
製品の機能に影響する重要な寸法や、直角度、平行度なども確認します。
最初の数点を測定することで、加工方法や段取りに問題がないかを早い段階で確認できます。
もしここで異常が見つかれば、その時点で加工を止めて、原因を確認することができます。
逆に、最初から何十個、何百個と加工してしまえば、あとになって不良が見つかったときに、すでに大量の不良品ができあがっているため取り返しが効きません。
今回の私の事例が、まさにそれでした。
量産中も抜き取りで精度測定する
最初の数点に問題がなかったからといって、それで検査を終わりにしてはいけません。
量産中にも、一定の数量ごとに抜き取りで精度を確認します。
加工機の状態や工具の摩耗、段取りの変化などによって、加工途中から精度が変化する可能性があるためです。
例えば、100個加工するとしても、最初の数個だけを確認して終わりにするのではなく、途中でも測定を行います。
重要なのは、「異常が発生してから調べる」のではなく、「異常を自ら発見し是正する」ことです。
数ものでは、不良を1個で止められるか、50個、100個まで作ってしまうかで、その後の手間が大きく変わります。
作業者が変わっても同じ品質になるよう、作業方法を標準化する
試作品を熟練者が加工して良品になったからといって、その方法が量産に適しているとは限りません。
熟練者の経験や勘だけに頼っている部分があると、作業者が変わったときに品質が変化する可能性があります。
そのため、加工条件、段取り、工具、測定方法など、重要な作業についてはできるだけ標準化しておくことが重要です。
「この人だから作れる」ではなく、「決められた方法で作れば、誰が作っても同じ品質になる」状態を目指します。
今回のような精度が必要な部品では、特に重要なポイントです。
数ものだからと、コストダウンを意識しすぎないこと
数モノ部品では、製作数量が多くなるため、1個あたりの単価を少しでも下げて利益を上げようとする考えが強くなります。
しかし、コストダウンを意識しすぎるあまり、安価な材料を選定したり、単価の低い人材に加工を任せっきりにしたり、検査工程を省いたりするなど、さまざまなところでコストを削ろうとすると、結局は品質に影響するリスクが高まります。
特に、精度が必要な部品では、「安く作ること」よりも「要求される品質を安定して作り続けること」を優先しなければ、今回のように、150個すべてに精度不良が発生してしまいます。
そして、不良部品を組立工程で受け止めざるを得なくなり、結果的に大きな手間とコストが発生し、完成した機械装置の品質も低くなり、エンドユーザーからの評価が下がってしまいます。
数モノだからこそ、単純に「1個あたりの加工費を下げる」のではなく、製作から検査、組立、手直しまで含めたトータルコストで考えることが重要と言えます。
部品の保管・運搬方法を決めておく
数もの部品では、同じ部品が大量に完成します。
すると、加工そのものだけではなく、その後の保管や運搬にも注意が必要になります。
例えば、部品同士を直接積み重ねることで傷が付いたり、変形したりする可能性があります。
そのため、専用のコンテナや緩衝材を使用し、どのように保管、運搬するのかを事前に決めておきます。
また、加工済み部品と未加工部品、不合格品などが混ざらないよう、置き場所を明確にしておくことも重要です。
部品の取扱いや作業場のルールを決めておく
数ものになると、部品を扱う人も増え、移動する回数も増えていきます。
そのため、
- どこに置くのか
- どのように運ぶのか
- どこを持つのか
- 完成品と不良品をどう区別するのか
といったルールを決めておくことも大切です。
特に精度が必要な部品では、加工が終わった後の取扱いによって傷や変形が発生すれば、せっかく加工した部品が使えなくなる可能性があります。
そのため、加工、測定、保管、運搬、組立まで含めて、最初から最後までどのように品質を維持するのかを考える必要があります。
今回の経験では、150個の部品に発生した精度不良を、最終工程である組立で受け止めることになってしまいました。
本来なら加工工程で発見して対策すべき問題を、組立工程でシムを製作して修正するという、最低で最悪でやってはならない作業になってしまったわけです。
数ものでは、「いかに不良を作らないか」だけではなく、「万が一不良が発生した場合に、早期に発見して被害を広げないか」という視点も重要です。
一度に大量の部品を作るからこそ、1個の異常を早く見つけることが、その後の大きな手戻りを防ぐことにつながります。
結局除却された機械装置
これは後日談であるが、この機械装置は一度も使用されることなく、3年後に除却されたと風のうわさで聞いた。
この機械装置は、エンドユーザーでの据付け、立ち上げをおこなったのち、エンドユーザーの生産工程が、顧客からのオーダー変更によって土壇場で変更され、最終的にこの機械装置を使用しないことになったそう。
あれだけ苦労して150台のユニットを組み立て、精度不良の部品を一つひとつシムで調整し、測定を繰り返しながら完成させた機械装置。
それが、結局一度も使われることなく、3年後には廃棄された。
この話を後から聞いたとき、「この機械装置は、初めからこうなる運命だったのではないか」っと、なんとも言えない気持ちになった。
ポイントまとめ
それでは、数もの部品は品質が低下して不良が発生するについて重要なポイントをまとめておきます。
ポイント
- 試作品で精度が出ても、量産で同じ品質になるとは限らない
- 量産では加工条件・作業方法・検査を標準化することが重要
- 不良は早期発見し、量産途中で被害を広げないことが重要
- コストダウンを優先しすぎると、手直しや品質低下で逆にコストが増える
以上4つのポイントです。
参考
*部品の品質管理についてはこちらの記事で紹介しています
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部品の品質管理は自社で検査測定するしかない【製作部品の精度を保証する方法】
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関連記事:【材料/溶接/加工/表面処理】
以上です。