装置を構想してから完成させるまでの方法には、さまざまな方法があります。
パターン | 特徴 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
内製型 | 全てエンドユーザーが自社で開発 | 機密保持・柔軟対応 | コスト・時間がかかるかも |
仕様発注型 | 仕様決定し装置メーカーに発注 | 作業効率・コスト削減 | 設計ノウハウが蓄積しにくい |
共同開発型 | エンドユーザーと装置メーカーが共同開発 | 双方の強みを活かせる | 意思疎通が難しい場合がある |
工程分業型 | エンドユーザーが工程ごとに外注 | 得意分野を活かせる | 全体の管理が難しい |
装置メーカー主導型 | 装置メーカーが独自に開発・販売 | 負担軽減・短納期 | 仕様変更ができない可能性 |
今回の記事では、装置はどうやってできるのか?を、上記の5つのパターンに分類して中立的な立場からまとめてみたいと思います。
記事の目次
装置を構想してから完成するまでの過程や方法
装置をゼロから作る工程
装置を構想してから完成するまでには、いくつもの工程を経る必要があります。
ざっくりですが、下記のような工程です
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構想・仕様の決定
どのような機能を持つ装置が必要かを整理し、要求仕様をまとめます。
- 機械設計
装置の構造・機構・部品構成などを図面化します。 - 制御設計
制御機器の選定・配線図などのハード面とPLCやロボットのソフト面の設計をします。 - 部品の手配と製作
図面や手配リストに基づき、加工品や市販部品を準備します。 - 組立・配線
装置の実体を作る工程で、機械の組立や電気配線を行います。 - 試運転・調整
動作確認や各部の微調整を行い、仕様通りに動くように仕上げます。 - 精度測定・完成検査
装置の性能が基準を満たしているか、精度や安全性などを検査します。 - 出荷・完成
装置を搬出・納品し、必要に応じて現地で据付や再調整を行って完成です。
このような工程は、一般的に「全部、装置メーカーがやっている」と思われがちですが、実際には、一つ一つを工程を「誰が請け負うのか?」にはいろいろなパターンがあります。
装置を構想してから完成までの形式
あたり前田のクラッカーですが、装置を必要とているのは装置メーカーではなく「実際に現場で使う人=エンドユーザーさん」です。そのため、装置にはエンドユーザーが必要としてる、機能や能力が正しく反映されていなければなりません。
この前提のため、装置を構想してから完成するまでの工程にはいろいろなパターンがあるわけです。
装置を構想してから完成するまでのありかた
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内製型
エンドーユーザーが構想から完成まで自己完結する
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仕様発注型
エンドーユーザーが仕様を作成し、それ以降は装置メーカーにオーダーする
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共同開発型
エンドーユーザーと装置メーカーが共同で、構想~完成までおこな
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工程分業型
構想~完成までの各工程をエンドーユーザーと装置メーカーや外注が個別に請け負う
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装置メーカー主導型
装置メーカーが独自に装置を開発する
一般的には上記5つのパターンで、装置を作ることになります。*私が機械メーカーに勤めている時には、主に「仕様発注型」がメインでしたが、ときどき、エンドーユーザーさんが内製化している装置の「組立て応援」をすることもありました。
それでは、次項からそれぞれのパターンを掘り下げて説明していきます。
参考
装置製造の方法は5つのパターンがあります
内製型
内製型とは、エンドユーザーが自社の製品を製造するために必要な装置を、自社で仕様を決定し、構想から完成まで一貫しておこなうパターンです。
内製型のメリット
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ブラックボックス化
自社の独自ノウハウを外部に漏らすことがないので競争力がアップします。
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技術・技能の向上と継承
ものづくりに欠かせない成功と失敗を経験することができるので人材育成になります。
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スピーディーに装置を作れる
製品開発と装置製作が密接に関われるので、素早く装置を現場に投入できます。
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コストの透明化
装置を作るために要する費用の内訳が明確になり、装置メーカーに依頼するよりもコストダウンできるかも。
内製型
内製型のデメリット
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視野が狭くなる
外部からの最新のノウハウ・情報が入ってこない。
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納期やトラブルの対応が弱い
就業規則の問題や身内に甘いなどの理由で。
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身内意識が芽生えて品質低下
装置メーカー相手なら改善させるのに、身内が作った装置にはあまい。
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優秀な人材が集まりにくい
本業は製品製造であるため、装置製造の部署は「日陰部署」になりがち。
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結局は外部に頼ることになる
外注・装置メーカーに応援を依頼するのはいいが、徐々に自分たちはサボりがちになる。
内製型には、自社のノウハウを守りながら、技術力を高め、スピーディーに装置を開発できるという大きなメリットがありますが、一方で、外部との交流が少ないことで視野が狭まりやすかったり、人材や品質の面で課題を抱えやすいという側面も否めません。
結局のところ、内製化がうまく機能するかどうかは、「自社にどれだけ本気の体制を作り、それを維持していけるか」にかかっていると思います。
参考
補足ですが、内製型には
- 社内に装置製作の専門部署を設置して作るパターン
- 装置製造の子会社を設立し、グループ内で装置を作るパターン
があります。
私がエンドーユーザーさんを見てきた感じだと、社内に内製化の部署を作るパターンは長続きしない事が多かったです。理由はいろいろありますが、、、、、
仕様発注型
仕様発注型とは、エンドユーザーが自社製品の製造に必要な装置について仕様を決定し、その仕様書をもとに装置メーカーへ装置の製作を発注するパターンです。
仕様発注型のメリット
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高品質な装置が作れる
最適な装置メーカーに依頼するため高品質になる。
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開発に発案に集中できる
自社で装置を作る必要がないので、開発のサイクルが早くなり効率的。
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短期間で多数の装置を導入可能
複数の装置メーカーに同時進行で発注することで、短期間でラインを立ち上げられる。
仕様発注型
仕様発注型のデメリット
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技術・技能の蓄積ができない
エンドユーザーがものづくりに必要な勘所を実体験することができない。
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部品や構造に統一性がなくなる
様々な装置メーカーで作ることで、装置の統一性がなく、維持・管理・使い勝手の問題が起きる。
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想定と異なる装置が完成することがある
エンドユーザーと装置メーカーとの認識のズレが発生するので「思ってたのと違う!」ってことに。
仕様発注型は、効率よく高品質な装置を導入できる反面、技術の蓄積が難しく、エンドユーザーの「要件定義スキル=仕様書の精度」によって装置の完成度が左右するので、要件を的確に伝える力(人材育成)が、課題になります。
共同開発型
共同開発型は、エンドユーザーと装置メーカーが協力し、お互いの得意分野を生かして、これまでにない装置を開発するパターンです。
共同開発型のメリット
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技術やノウハウが進化する
両者が協力し、トライ&エラーを繰返すので新しいアイディアが生まれる。
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試作・改善のサイクルが早い
エンドユーザーと装置メーカーの距離が近いので、短い期間で装置を開発することができる。
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高品質の装置が製作可能
フィードバックが速くて正確なので、本当に現場で必要としている装置を作ることができる。
共同開発型
共同開発型のデメリット
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計画白紙になることがある
完成までに長期間必要で、実現不可能な壁にあたってしまうことも。
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コストが不透明になりやすい
仕様変更や試行錯誤が発生しやすく、予算超過のリスクがある。
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責任の所在が曖昧になることがある
問題発生時に「どちらが悪いか」が不明確で、共同であるがゆえにトラブルになるかも。
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意思疎通がうまくいかないと失敗しやすい
相性が大切で、お互いの認識がズレていると関係が悪化することも。
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両者に一定以上のスキルが求められる
対等に仕事ができる関係性が大切なので、両者にはそれなりの強みが必要。
共同開発型は、これまでに存在しない装置を作ることができる反面、手間やリスクも大きく、成功のカギは「信頼関係とスキルのバランス」と言えるかもしれません。
工程分業型
工程分業型は、構想・設計・部品製作・組立・配線・試運転・などの各工程を、エンドユーザーと複数の装置メーカーや外注で分担して行うパターンで、エンドユーザーが工程の割り振り、個別に発注を行います。
たとえば、
エンドユーザーが構想・設計 → 部品製作業者が部品の製作 → 装置メーカーが機械組立 → 外注(個人事業主)が配線 → エンドユーザーと外注のソフト屋が試運転・調整を行い完成
こんな感じです。
工程分業型のメリット
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不得意な工程を得意な人が補うことで、装置を完成させることができる
工程分業型
工程分業型のデメリット
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全体の品質保証が難しい
誰がどこまで責任を持つかが曖昧になりやすく、品質のばらつきが出る。
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管理の手間が増える
エンドユーザーが進捗管理をおこなうが、各工程ごとに個別に管理しなければならず負荷が大きい。
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トラブル時の原因追及が面倒
問題が発生した際に「何が?誰が?原因か?」が分かりにくく、責任の所在が不明確になることも。
このパターンは、あまりメリットがありません。
装置メーカーに部品手配・製作~完成までを一式発注するのとは違い、エンドユーザーが各工程ごとに業者を選別し、個別に発注するので、その状態を管理しまとめることは、大きな負担になり、人間関係と装置の品質のトラブルが連発する可能性があります。
装置メーカー主導型
装置メーカー主導型は、装置メーカーが独自に仕様を決めて装置を開発し、エンドユーザーに提案・販売するパターンです。
製造業にはさまざまなマーケットがありますが、特定のニーズに向けて装置メーカーが先に設計・試作を行い、汎用装置として売り出すのです。
装置メーカー主導型のメリット
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装置の信頼性・安定性が高い
量産の装置であるため、初期不良や調整の手間が少ない。
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装置のコストを低く抑えられる
複数のユーザーに販売する前提で開発されるため、1台あたりのコストが低いかも。
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エンドユーザーが構想・開発する必要がない
既に装置が完成しているため、エンドユーザーは短期間で導入・立ち上げができる。
装置メーカー主導型
装置メーカー主導型のデメリット
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維持・管理が難しい
構造や制御が装置メーカーのブラックボックスになっていてトラブったときに自分で対応できない。
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自社の仕様に完全に合わないことがある
あくまで汎用装置のため、細かい仕様変更に対応してくれない可能性がある。
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競合他社も同じ装置を導入することができる
汎用装置であるため、他者に製品の製造ラインをパクられる可能性がある。
装置メーカー主導型は、「すぐに使える」「コストを抑えたい」場合に有効ですが、一方で、「自社専用」「競争力アップ」「ノウハウ蓄積」などを重視するなら、仕様発注型や共同開発型で装置を製作したほうがいいと思います。
ポイントまとめ
それでは、装置を構想してから完成するまでの過程や方法について重要なポイントをまとめておきます。
ポイント
- 装置を作る方法は5つあります
- 内製型はエンドユーザーが構想から完成までおこなうパターンです
- 仕様発注型は、エンドユーザーが仕様を決定し、装置メーカーが仕様通りに装置を作ります
- 共同開発型は、エンドユーザーと装置メーカーが協力して装置を作ります
- 工程分業型が、各工程をエンドユーザーと装置メーカーや外注が個別に請け負うパターンです
- 装置メーカー主導型は、装置メーカーが独自に仕様を決めて開発するパターンです
以上6つのポイントです。
関連記事:【機械組立の心構えと基本】
以上です。