今回は「軸(シャフト)の面取り加工の問題」についての記事です。
軸を回転に使用する場合に、ベアリング(軸受)を挿入して支持することがあります。
この時、組立で問題となることは、軸とベアリングの「はめ合い」や「挿入時の作業性」です。
今回は、その中でもベアリングの挿入時の作業性について考えてみたいと思います。
記事の目次
軸(シャフト)の面取り加工の問題
軸(シャフト)の重要な事
軸(シャフト)を回転軸として使用する場合には、ベアリングなどの軸受や回転部品を組付ける事になります。
そのような時に、重要になるポイントがあります。
重要なポイント
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軸径の公差・・・軸受や部品が入らなかったり、緩すぎて遊びが多くなる
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全長の公差・・・全長が長すぎると軸受や回転部品に遊びができる、短すぎると軸受や回転部品に負荷がかかる。
一般的にはこの2点が重要とされていると思います。(もちろん製作図面に指示がある場合です)
ですが、私はもう一つ重要なポイントがあると考えています。
もう一つの重要なポイント
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軸の面取り加工・・・軸に挿入するときの、挿入のしやすさの作業性に関わる
このように「軸の面取り加工」が第三の重要なことだと思っています。
軸の面取り加工
そもそも「面取り」とはどのような目的があるのでしょうか?
面取りの目的
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バリの除去・・・精度/安全
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角で手を切る・・・安全
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角は潰れやすいので角を取っておく・・・完成後の取り扱い/精度
このような目的があると思いますが、実は面取りをすることで弊害が発生することがあります。
面取りの弊害
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ベアリングなどの軸受や回転部品を取付けできない
この弊害について実例をもとに次項から説明していきます。
面取りイメージ
面取り加工の問題
先日こんな事がありました。
状況
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回転軸を200本製作
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材料はSUSみがき丸棒(研磨)
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面取り加工は「C1面取り」
このような状況で回転軸を製作したのですが、とんでもない問題が発生してしまいました。
発生した問題
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回転軸にベアリングを入れようとしたのですが、全体の8割の軸にベアリングが入りませんでした。
原因調査の為、マイクロメーターで軸の両端と中間位置の3箇所を測定しましたが、結果は3箇所すべて基準寸法に対して「-0.01mm」で問題なしでした。
問題がないのに、ベアリングが入らないのは納得できない、、、。とりあえず軸の端をサンドペーパー削ってみました。
すると、先ほどまで全く入る感じではなかったベアリングが挿入できたのです。
これはいったいどういう意味なのか?考えてみました。
挿入イメージ
面取りの問題を考える
私なりの推測を立ててみました。
推測
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軸の端に面取りのバリが出ている
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面取りによって変形している
この2点が考え付きました。マイクロメーターで測定はしていますが、マイクロメーターでは分からないほどの微細なモノだったのか?測定ミス(見落とし)だったのか?疑問が残りますが、サンドペーパーで軸の端を削ってベアリングが挿入できた事実を考えると、バリや変形が濃厚ではないかと思いました。
この件に関して第3者の意見を募りたかったのでツイッターでフォロワーさんに今回の件を聞いてみました。
フォロワーさんの意見
Aさん
- 軸の外径(研磨)の加工は最後にしているか?外径の仕上げを最後にやらないとバリがでます。
Bさん
- 単なるバリではないか?面取りのやり方が悪い。
Cさん
- C面の角度は45°なので浅い角度の15°にしてみてはどうか。角度を浅くすると外径への分力が下がるので、変形/バリが少なくなる。
このようなご意見を頂戴いたしました。ありがたい事です。
それではフォロワーさんの意見について考えてみます。
フォロワーさんの意見に対して
Aさんの意見
- 今回はみがき丸棒(研磨)を鋼材屋から購入してそのまま追加工したので、外径の加工はしていませんでしたので今回の件とは違うようです。
Bさんの意見
- 自分と同じ意見でしたので確信が増しました。対処方法はバリはサンドペーパーで処理するしかないようです。
Cさんの意見
- バリや変形が起きる事を予測して加工指示を変更する。目から鱗の凄い考えです。この方法が上手くいけば、加工する側の手間が増えずに改善します。
面取りの改善の実験結果
今回の件の改善案として、フォロワーのCさんの意見を採用したいと思い、実際に面取りの角度による違いを実験してみる事にしました。
条件
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製作本数:各業者10本
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実験材料:みがき丸棒(研磨)
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面取り後のサンドペーパーはかけない
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業者には実験の趣旨は伝えずにいつも通りのやり方で作業してもらった
判断方法:ベアリングが挿入できるかorできないか?
加工業者 | 面取り:45° | 面取り:15° |
A社 | 挿入可 | 挿入可 |
B社 | 挿入不可 | 挿入可 |
C社 | 挿入可 | 挿入可 |
D社 | 挿入可 | 挿入可 |
この結果、イマイチ納得できない、、明確な結果を得られませんでした。
ただ、15°面取りは鋭角なのでベアリングの挿入が滑らかでした。
面取り角度イメージ
なぜ明確な結果を得られなかったのか?
問題が起きた時の条件と実験の条件を比べると、大きく違うのは「製作本数」でした。
やはり、製作本数が200本と10本では製作の「段取り」「気の使い方」が違うのではないでしょうか?本数が多いほど、効率を求めるので雑になりがちですから、、、。
軸の面取り加工の問題のポイントまとめ
それでは、軸の面取り加工の問題について重要なポイントをまとめておきます。
ポイント
- 軸の面取り加工は重要です
- 面取り加工が影響して挿入できないことが発生する
- 面取り角度を鋭角にすると、バリや変形が抑えられ挿入もし易くなる可能性がある
以上3つのポイントです。
面取り加工によって起きる問題、そしてその改善方法について考えてみました。面取り角度の改善については明確な結果が得られませんでしたが、可能性は十分ありそうです。今後、数百本の軸を製作する機会があればその時に15°面取りやってみる事にします。参考にしてください。
*シャフトの測定にはマイクロメーターがおすすめです
関連記事:【材料/溶接/加工/表面処理】
以上です。