表面処理

表面処理の違いによる膜厚/厚みと寸法変化の実験データ

表面処理とは

表面処理とは、材料の表面に施される処理の事です。塗装、メッキ、アルマイト、焼入れなど様々な処理方法があります。

表面処理を施すと

左は黒染め    右はリューブライト

表面処理の膜厚と問題点

表面処理の種類によっては材料の厚さが変化する場合があります。例えば塗装では材料の表面を塗料で覆う事になるので、塗料の厚み分材料が大きくなります。これが表面処理の膜厚です。

組立においては表面処理によって部品の仕上がり精度に影響するので、この膜厚は厄介な問題となります。

 

組立目線の問題点

  • 均一な膜厚
  • 材料+膜厚で指定寸法となるように

 

表面処理の精度を追求すると起きる問題点

  • 納期
  • 単価
  • 耐腐食性

表面処理の精度追及で起きる問題を考えると状況は複雑ですので、今回は組立目線の問題点に重点を置いて考えてみたいと思います。

 

均一な膜厚

膜厚が均一でないと機械加工した面精度が良い部品であっても表面処理を施すことで面精度が悪くなります。不均一な膜厚によって平行度や鉛直度が悪くなり、部品が斜めに傾いたり、ガタツキが発生します。

この場合基本的には、表面処理の種類が原因で設計側で種類の選択を十分に検討しなければいけません。ただ表面処理の種類によっては施工する業者によって均一性が異なります。特に膜厚の精度が悪い安価な表面処理では施工業者の差が大きく出ます。その差は処理の丁寧さと表面処理装置の機能の差です。ですから「どの表面処理を施すのか?」以外に「どこの施工業者にだすのか?実績は?」まで考える必要があると言うことです。

 

材料+膜厚で指定寸法

部品の寸法が機械加工された時に出ていても表面処理をして寸法が出ていなければ意味がありません。

加工側が寸法指定や公差指定がある場合に、指定された値のどこを狙って製作するのか?を把握しておきたいのですが、加工する側が狙ってくる寸法は状況により様々です。

 

加工側の考え

  • 穴は小さめ/板は厚め・・・・修正が利くから
  • 穴は大きめ/板は薄め・・・・切削工具が摩耗しても公差に収まるから
  • 寸法の中央値・・・・仕上りがどちらに触れても公差に入るから

 

図面の指定寸法/公差が悪いのか?加工側の狙ってくる寸法が悪いのか?施した表面処理の種類が悪いのか?

加工側が狙ってくる寸法は図面の指示された寸法に収まる寸法ですから、加工が悪いと言うことはないでしょう。となると、加工側がどこを狙って製作するかを考慮して、設計側が指定寸法/公差と表面処理の種類を決定する必要がありそうです。

 

アルマイトは見分けがつかない

左はアルマイト    右は硬質アルマイト

表面処理を実際にやってみる/実験

表面処理について調べてみますと様々な情報が出てきますが、「今自分が置かれている環境で仕上がってくる部品が、本当にその情報と一致するのか?」と疑問がありました。

それは、日ごろから部品チェックをしている中で不適合の部品が後を絶たず、その不適合部品の原因の一つに表面処理が考えられたからです。ですから、表面処理の情報を鵜呑みにせずに実際に検証してみようと思いました。

 

実験する表面処理と材料

今回実験した表面処理と材料の一覧です。膜厚の指定は無しで行いました。

表面処理の種類 材料 材料寸法① 材料寸法②
三価クロムメッキ SS400 みがき材 FB 200×200 9t 丸棒 30Φ×200L
無電解ニッケルメッキ SS400 みがき材 FB 200×200 9t 丸棒 30Φ×200L
リューブライト SS400 みがき材 FB 200×200 9t 丸棒 30Φ×200L
黒染め(フェルマイト処理) SS400 みがき材 FB 200×200 9t 丸棒 30Φ×200L
硬質アルマイト 5052 200×200 10t
アルマイト 5052 200×200 10t

 

測定箇所

測定の方法

  • 材料の厚さの測定・・・番号指定
  • リーマー穴の測定 ≪Φ5/Φ6/Φ8/Φ12≫ の4種類
  • 打刻をし、表面処理後に測定する時に測定箇所を間違えないようにする

 

測定箇所のイメージ図

 

測定器/確認方法

高精度な測定機器は持ち合わせていないので、普段部品チェックで使用している測定器を使いました。また、リーマー穴は実際に平行ピンを入れてみてその手応えの変化を確認しました。

 

測定器/確認方法

  • マイクロメーター・・・厚さ/リーマー穴
  • 平行ピン・・・挿入時の手応え

 

測定の注意点

測定方法/注意点

  • 気温とワーク温度・・・処理前と処理後で温度差を3度以下とした
  • 表面処理前と表面処理後を測定し変化量を膜厚とする
  • 膜厚は2面合計の値しか測定できないので、片面の膜厚としては考えない。

 

実験結果

無電解ニッケルメッキを施したFBとみがき丸

 

FB/アルミ板の膜厚

表面処理前と表面処理後の板厚をマイクロメーターで測定し変化量を膜厚としています。

表面処理の種類 膜厚平均 膜厚 最大 膜厚 最小 膜厚のバラつき 標準偏差
三価クロムメッキ 0.025 0.04 0.014 0.026 0.0076
無電解ニッケルメッキ 0.009 0.013 0.005 0.008 0.0022
リューブライト 0.004 0.008 0.001 0.007 0.002
黒染め(フェルマイト処理) 0.002 0.003 0.001 0.002 0.009
アルマイト 0.006 0.01 0.002 0.008 0.0018
硬質アルマイト 0.011 0.013 0.01 0.003 0.0008
  • 膜厚はワークの片面ではなく、両面(2面)の合計値です。
  • 数値の単位は(mm)です。
  • 膜厚の指定はしていません。

 

みがき丸の膜厚

表面処理前と表面処理後の板厚をマイクロメーターで測定し変化量を膜厚としています。

表面処理の種類 膜厚平均 膜厚 最大 膜厚 最小 膜厚のバラつき
三価クロムメッキ 0.026 0.03 0.023 0.007
無電解ニッケルメッキ 0.018 0.021 0.015 0.006
リューブライト 0.008 0.009 0.006 0.003
黒染め(フェルマイト処理) 0.003 0.004 0.002 0.002
  • 膜厚はワークの片面ではなく、両面(2面)の合計値です。
  • 数値の単位は(mm)です。
  • 膜厚の指定はしていません。

 

FB/アルミ板のリーマー穴の膜厚

リーマー穴の評価は2通り

  1. 表面処理前と表面処理後のリーマー穴をマイクロメーターで測定し変化量を膜厚としています。
  2. リーマー穴に平行ピンを挿入した時の手応えを表面処理前と表面処理後で比べています

挿入時の手応えの評価方法は下記の4項目で、表面処理前の状態は「指1本で軽く入る」です。

  • 指一本で軽く入る
  • 軽く押し込んで入る
  • 強く押し込んで入る
  • 打ち込んで入る

 

表面処理の種類 リーマー穴の膜厚平均 平行ピンの手応えの変化/平均
三価クロムメッキ 0.006 打ち込んで入る
無電解ニッケルメッキ 0.006 打ち込んで入る
リューブライト 0.009 打ち込んで入る
黒染め(フェルマイト処理) 0.003 指1本で軽く入る
アルマイト 0.004 強く押し込んで入る
硬質アルマイト 0.006 打ち込んで入る
  • 数値の単位はミリです。
  • 膜厚の指定はしていません。

 

結果から感じる事

測定結果の数値から判断すると膜厚が厚く、厚さのバラつきが大きいのは三価クロムメッキで、その他の表面処理は膜厚が薄めで厚さに均一性がありそうです。ただそうはいっても膜厚のバラつきが0.01に迫る場合もあり絶対的な信用性があるかと言われればそうでもなさそうです。正直三価クロムメッキ以外の表面処理は膜厚の均一性はもう少しあるのかと思っていました。

また丸棒だけの結果を見ますと、三価クロムメッキは膜厚の厚さにバラつきは少ないようです。これは表面処理の施工方法などにより「メッキが乗り易い/乗りにくい」差なのだろうと思いました。

 

疑問

しかし、今回の測定結果の数値が絶対に正しいとは思えません。と言うのも、今まで部品チェックをしてきた経験との整合性が取れないのと、測定値が本当に正しいのか?と不安になる事があったからです。

そのような、疑念を抱かないように次回はもう少し信頼性の高い方法で測定したいと思います。

信頼性の高い方法を検討する

  • 信ぴょう性のある測定器
  • 測定方法・・・温度
  • ワークのn数増し・・・数回に分けて何度かテスト

 

腐食について/余談

耐腐食性について私が以前テストした結果がありますのでご紹介します。

塩化水素(強酸)の雰囲気のなかで表面処理をした部品の耐久テストを2か月間放置して観察しました。

 

表面処理の種類 腐食具合
塗装 ウレタン塗料は変化なし。ラッカー塗料は一部錆が発生
三価クロムメッキ 黒っぽく変色。錆びなし。
無電解ニッケルメッキ 薄っすら錆びが発生
黒染め 完全に錆びている。錆びを除去しないと部品がばらせない
ステンレス 斑点の錆が発生。おそらく鉄粉が付着していたと思われる

 

まとめ

表面処理について実験を試みましたが、納得できる結果とはなりませんでした。ですが、日ごろから疑問に思う事や変えたいと思う事は、自ら実践してデータと経験を蓄積する意味は大いにあると思います。教科書が全てでもなく、絶対に正しいわけでもない。「実際にやってみてどうなのか?」は非常に大切なことです。

 

以上です。

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