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熱処理で得られる特性と目的/焼入れで硬くし焼き戻しで粘りを出す

2021年4月8日

 

今回は「熱処理で得られる特性と目的」についての記事です。

熱処理は金属をはじめカーボン、セラミック、樹脂など様々な材料に特性や形状を変化させる目的で施されています。

その中でも、私にとっては鋼(金属)の熱処理が一番身近です。鋼の熱処理の一番の目的に、部品の耐摩耗性や強度の向上などの長く使用するため目的がありますが、でもそれは何となく理解しているだけで鋼に対する熱処理が何なのか?きちんと理解できていませんでした。

そこで今回の記事では、鋼に対する熱処理の入門として基礎情報をまとめておこうと思います。

 

熱処理で得られる特性と目的

熱処理とは

皆さんは熱処理と聞いて、何を思い浮かべますか?

私の場合は、「炉で材料を高温にする=熱処理」と言うイメージが強いですね。

*今回の記事では「一般的に炭素量が0.05~1.5%が含まれている金属 = 鋼」の熱処理を前提に話しを進めていきます。

 

 

本当のところの熱処理の定義を調べてみますと、このような意味になります。

  • 熱処理とは、加熱して冷却すること

 

そして、加熱と冷却が鋼(金属)の特性に影響する割合はこうなります。

  • 材料特性に影響する割合は 加熱が2割 冷却が8割

 

私を含め多くの人が、「熱処理=加熱」と言うイメージを持っていると思いますが、実際には熱処理によって特性に影響を与える一番の要因は冷却なのです。

でもそれではイマイチよくわかりませんよね。

 

もう少し掘り下げますと、こうなります。

  • 鋼の特性は冷却速度よって大きく変わる

 

つまり、「急速冷却なのか?」「ゆっくり冷却なのか?」「適度な速度で冷却なのか?」によって加熱後の特性が左右され、逆に加熱速度は速くても遅くても影響がほとんどありません。

 

熱処理で得られる特性

「加熱して冷却する=熱処理」によって得られる特性にはどのようなことがあるのでしょうか?

 

出典:日本製鉄株式会社 鉄の特性を引き出す熱処理の化学

 

熱処理の代表的な処理方法には「焼入れ」「焼き戻し」「焼きなまし」「焼きならし」がありますが、この熱処理によって得られる特性には違いがあります。

 

熱処理の違いによる得られる特性

  • 焼入れ・・・硬くなる
  • 焼戻し・・・粘りが出る
  • 焼きなまし・・・軟らかくなる
  • 焼きならし・・・金属組織を均一化して強くする

 

この4つが熱処理によって得られる特性になるのですが、簡単なイメージをお伝えすると「急冷 = 硬く」「ゆっく冷却 = 柔らかく」と言った特性になります。

実際には、冷却する方法や時間や温度によって一概には言い切れませんが、イメージとしてはこんな感じです。

 

熱処理の目的

鋼に熱処理をすることで、「硬くなる」「強くなる」「粘りが出る」「柔らかくなる」のですが、そもそもなんのために熱処理をするのでしょうか?

 

その理由には、例えばこのようなことが挙げられます。

  • 強度向上
  • 耐摩耗性
  • 弾性(ばね特性)
  • 耐食性
  • 耐粘性
  • 加工性

 

このような目的があり、それぞれの目的に応じた熱処理の方法があります。

ただ、ここでポイントになるのが熱処理をする鋼の成分です。

実は鋼を熱処理した後の特性は熱処理の方法以外に、鋼にどのような元素が含まれているか?がとても影響しています。

 

鋼の特性に影響する元素たち

一般的に熱処理と言えば多くの人が「焼入れ」が思い浮かぶように、鋼は「硬くて強くする」ことができると説明できなくても知っている人は多いと思います。

では、鋼を「硬くて強くする」ためには絶対に欠かせない元素あるのですが、それはいったい何でしょうか?

 

焼入れに欠かせない元素はコレです

  • 炭素(C)

 

焼入れには炭素の含有量が非常に重要で、0.3%以上含有していないと焼入れを行っても実用性のある硬さも強さも得られません。

なので、「焼入れには必ず炭素が0.3%必要」と覚えておきましょう。

 

出典:株式会社ヒーテック モノの硬さ

 

熱処理には炭素が深く影響していますが、鋼には炭素とそれ以外に4つの元素が特性に影響しており、それらを「5元素」と言います。

 

5元素の特性はコレです。

  • C(炭素)・・・硬さと強さに影響し、最も重要な特性を左右する元素
  • Si(けい素)・・・硬さと強さに影響するが炭素ほどは影響しない
  • Mn(マンガン)・・・焼きが入りやすくなり、強じん性(粘り強さ)に影響する
  • P(リン)・・・有害元素で、氷点下の寒い環境になると鋼がもろくなってしまう
  • S(硫黄)・・・有害元素で、高温環境では鋼がもろくなってしまう

 

上記の5元素を含んだ鋼に、より特殊な特性を持たせるために加える元素があり、これを「特殊元素」と言います。

 

特殊元素の代表はこのような元素です。

  • Cr(クロム)・・・耐摩耗性、耐食性、焼入れ性向上、浸炭を促進、など
  • Mo(モリブデン)・・・焼入れ性が最も向上する
  • Ni(ニッケル)・・・耐食性、焼入れ性向上、粘りがあり衝撃に強い、など
  • V(バナジウム)・・・耐摩耗性(C炭素と化合物を作る)、高温に強い
  • W(タングステン)・・・耐摩耗性(C炭素と化合物を作る)、高温に強い
  • Co(コバルト)・・・耐摩耗性(C炭素と化合物を作る)、高温に強い
  • B(ボロン)・・・含有が微量0.001%でも深くまで焼きが入る

 

このように、多くの元素が鋼の特性に影響していて、その元素の含有の有無や量によって材料に種類があるのです。

 

なぜ熱処理をすると硬くなるのか?

焼入れの仕組み

それでは、なぜ熱処理をすると鋼は硬くなるのか?考えていきましょう。

前述でも言いましたように、鋼に含まれている元素は鉄以外に5元素、特殊元素がありますが、焼入れの特性に大きな影響が出る炭素に注目して説明します。

 

出典:日本製鉄株式会社 鉄の特性を引き出す熱処理の化学

 

そもそも、常温の鋼の状態は鉄原子と炭素原子は分離していて、この状態だと硬さも強さも高くありません。

ところが、鉄は温度によって結晶の構造が変わる性質があり、鉄を加熱して911度以上になると金属組織の構造がフェライト組織からオーステナイト組織に変わります。

このオーステナイト組織とは、鉄原子と鉄原子のすき間が広くなった状態のことで、この状態になると常温では分離していた炭素原子が鉄原子のすき間に入り込みます。

 

ここがポイントです!

  • 鋼の鉄原子と鉄原子の中に炭素原子が入り込むとひずみが発生して硬くなる = 焼きが入る

 

高温で鉄原子のすき間に炭素原子が入り込んだ状態で水や油などに漬けて急冷すると、鉄原子のすき間は狭くなり炭素がを入り込んだままの状態となるので硬くて強くなるのです。このように炭素を取り込んだ状態の金属組織をマルテンサイト組織と言います。

 

焼入れのデメリットと焼き戻し

焼入れをすると鉄原子のすき間に炭素原子を入り込むので硬くなるのですが、実はそれには弊害があります。

 

炭素が入り込む弊害はコレです。

  • ひずみ・・・鉄原子間に炭素が入り込むと周囲にひずみが発生することで「硬くなる」が、ひずみが大きいと時間経過で割れを起こすことがある
  • 硬くてもろい・・・ただ硬いだけで粘りがないので実用できる強度がない

 

このような状態では、もちろんそのまま使用することはできないので、さらに熱処理を施します。

 

焼入れ後に行う熱処理はコレです。

  • 焼き戻し・・・取り込みすぎた炭素を焼き戻しによって吐き出させる

 

焼入れ後には焼戻しを行うことが一般的で、これによって硬すぎた鋼に粘り特性と適度な硬さが出るので、実用可能な強度となります。

 

出典:日本製鉄株式会社 鉄の特性を引き出す熱処理の化学

 

焼き戻しには温度によって種類があるので紹介しておきます。

  • 低温焼戻し(150℃~200℃)・・・あまり硬さを低下させずに応力除去する
  • 高温焼戻し(450℃~650℃)・・・強靭化(調質)して強くてしなやかにする

 

と、ここで注意しておきたいことがあります。

それは、焼戻しは「温度を間違えるともろくなってしまう」ということです。

 

焼戻しでもろくなる温度はコレです。

  • 低温焼戻しぜい性・・・300℃~400℃
  • 高温焼戻しぜい性・・・520℃~600℃

 

基本的にはこの温度を避けて焼き戻しをするか、この温度付近は徐冷ではなく急冷することで対策ができるようです。

 

熱処理で得られる特性と目的のポイントのまとめ

それでは、熱処理で得られる特性と目的について重要なポイントをまとめておきます。

 

ポイント

  • 熱処理とは、加熱して冷却すること
  • 鋼の特性は冷却速度よって大きく変わる
  • 鋼の特性に最も影響する元素は炭素で、0.3%の含有量が必要
  • 鋼の鉄原子と鉄原子の中に炭素原子が入り込むとひずみが発生して硬くなる
  • 焼入れしたら焼き戻しをおこなう必要がある

 

以上5つのポイントが大切です。

 

この記事は、下記の書籍を参考文献としています。

  • 絵で見てわかる熱処理技術 著:藤木榮

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以上です。

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