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【センサ/電子機器 】

イオナイザーの種類と除電方法【静電気と帯電の仕組みを解説】

2020年11月23日

 

今回は「イオナイザーの種類と除電方法/静電気と帯電の仕組み」についての記事です。

静電気は誰しもが一度は「バチン!」と感電したことがある身近な現象です。

日常生活で静電気が大きな問題になることはあまりないのかもしれません。しかし、機械装置や製造ラインにおいては静電気は対策すべきことでしょう。

対策には様々な方法がありますが、その一つにイオナイザーと言う機器を使用する方法があります。そこで、今回はイオナイザーと静電気について、除電の仕組みまでまとめておこうと思います。

 

イオナイザーと方式

イオナイザーとは

イオナイザーとは、静電気除去器や徐電器と呼ばれる静電気を中和する機器です。

 

出典:SMC イオナイザー IZS31 カタログ

イオナイザー のカタログ

 

 

静電気の特徴として、静電気を帯びている物体にはゴミやほこりが引き寄せられたり、モノが引っ付いてしまうことがあります。

機械装置にとって、このような状態は好ましくない状況で、特にクリーンルームの製造工程ではワークへの付着は大きな支障をきたすので改善しなければなりません。

また、静電気は引き寄せるだけでなく、放電もするので電子機器が破損したり火災が起きることもあります。

この様な静電気によるトラブルを、未然に防ぐために出番となる機器がイオナイザーなのです。

 

方式

イオナイザーの静電気除去にはいくつかの方式があります。

 

出典:Panasonic イオナイザとは

除電方式

 

イオナイザーの方式

  • コロナ放電式
  • 軟X線式
  • 放射線式
  • 紫外線式

この中でも、安価なコロナ放電式が一般的で、私もコロナ放電式以外を使用したことはありません。

 

静電気と帯電

イオナイザーの概要は前述で説明しましたが、詳しい除電の仕組みを理解するために、静電気と帯電についてまとめておきます。

 

静電気とは

静電気とは、物体の「プラスの電荷」か「マイナスの電荷」のどちらかが多い状態に起きます。

 

原子の構造

原子の構造

 

通常、物体の原子の陽子(プラスの電荷)と電子(マイナスの電荷)の数は等しいので、電気的に中性の状態ですが、物体に刺激を与えると、電子(マイナスの電荷)が自由電子となり放出されます。

電子の数が少なくなった物体は、陽子の数が多くなるのでプラスの力が大きくなり陽イオンとなり、放出された電子を受け取った物体はマイナスの力が大きくなり陰イオンとなります。このように、プラスかマイナスのどちらかに片寄って帯電(電気が流れない状態)したままの電気現象を静電気と言います。

プラスかマイナスのどちらかに片寄っている物質は、プラスの電荷とマイナスの電荷の数が等しい状態、つまり安定した状態に戻ろうとする働きをします。この現象のことを放電と言い、帯電した物体を手で触ったときに「バチン!」と電流が流れるのはこのことです。

 

陽イオンと陰イオン

原子の構造

 

*電荷とは原子を構成している、素粒子(陽子、中性子、電子)のもつ電気的な性質のことで、陽子がプラスの電荷(正電荷)で中性子が中性、電子がマイナスの電荷(負電荷)です。電気的な性質の特徴として、同じ電荷同士では反発しあい、異なる電荷同士では引き合うことが挙げられ、この特性をクローン力と言います。

*陽イオンと陰イオンのことを、家電メーカーの宣伝効果で世間では「プラスイオン」「マイナスイオン」と言いますが、科学的にはこの表現は使用されず定義も異なるようなので、注意が必要です。

 

帯電

静電気は帯電したままの電気現象のことですが、それでは帯電が起きる状況について考えてみたいと思います。

 

帯電が起きる身近な代表例を2つ紹介します。

  • 摩擦帯電・・・物体同士をこすり合わせることで起きる。下敷きと服を擦って、下敷きに髪の毛が引っ付くのはこの現象
  • 剥離帯電・・・物体からフィルムなどをはがした時に起きる。樹脂カバーの保護フィルムを剥がした時にフィルムが引っ付く現象

どれも、物体に刺激を与えることで発生するのが特徴ですが、実は物体によって帯電し易いモノと帯電しにくいモノがあります。

 

*帯電のし易さと、プラスとマイナスのどちらに片寄るかは「帯電列」で表すことができます。

出典:Panasonic 静電気の特性

静電気の特性

 

除電の仕組み

除電の仕組みとして、イオナイザーの方式で一般的なコロナ放電式を例に解説します。

 

コロナ放電とは、先端が尖った電極に高電圧をかけて放電させることです。コロナ放電によって、気体(空気)はイオン化します。

 

除電イメージ

除電イメージ

 

コロナ放電によって、気体(空気)の分子が電子を放出したり取り込んだりして、イオン化が起きます。マイナスの電荷である電子を放出した原子を陽イオン、電子を取り込んだ原子は陰イオンとなります。

原子の解説で説明しているように、原子は陽子(プラスの電荷)と電子(マイナスの電荷)の数が等しい状態になろうとするので、プラスの電荷かマイナスの電荷のどちらかが多い状態(静電気)の物体がコロナ放電によって発生した陽イオン又は陰イオンを取り込むことで、打ち消し合い中性な状態となるので除電されます。

また、イオナイザーからは空気を送る機能もあるので、除電したい物体に向けてイオンを送ることができるので、除電を速やかに行うことができます。

 

イオナイザーを使わない静電気の対策

静電気は、ゴミやほこりが引き寄せられたりモノが引っ付いてしまうだけでなく、放電によって電子機器が破損したり火災が起きることもあるので対策をしたいのですが、全ての物体をイオナイザーで除電することはできません。

では、イオナイザーを使用しない静電気の対策にはどのようなものがあるでしょうか?

 

例えばこのような対策があります。

  • 接地(アース)する・・・電気を流れやすくする(プラスの電荷とマイナスの電荷が等しくなる)
  • 静電気帯電防止服/帯電防止靴の着用・・・導電性がある素材で電気を流れやすくする
  • 導電性カラーマットの使用・・・接地(アース)と同様の効果
  • 静電気防止スプレー・・・導電性を高める薬品を使用
  • 湿度管理・・・湿度が高いと空気中の水分に電気が流れる(帯電しにくい)

静電気対策がされている工場や作業エリアではこのような対策が行われています。

 

まとめ

私は過去に静電気の放電によって感電したことがありました。

それは、塩ビ配管をのこぎりで切断していた時でした。作業着は化学繊維のクリーンつなぎ(紙つなぎ)と言われるものを着用しており、切断作業中に「バチン!!」とかなり大きめの音とともに、指先から肩にかけて電気が走りました。今までに静電気の感電は日常的に経験していましたが、ここまで大きな感電は初めてでした。よほど大きな電流が通ったのか、しばらく腕が上がらなかったことを覚えています。静電気と言えども、甘く見ずにしっかり対策したいですね。

 

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以上です。

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