組立ての技術 据付/移設

墨打ち作業を確実におこなう方法/考え方と心得

 

今回は「墨打ち作業を確実におこなう方法/考え方と心得」についての記事です。

墨打ちは非常に重要な作業であるにも関わらずに、結果的にいい加減な墨打ち精度となっている場合があります。

今回の記事は墨打ち作業で間違いや失敗を低減するために私が行っている方法や考え方をまとめたものになります。

 

墨打ちとは

組立における墨打ちとは主に据付などに必要な芯(基準線)をFLに描くことです。

*墨打ち作業についてはこちらの記事の「墨打ち作業(基準線・ケガキ線)の解説と消えない方法/据付」でも解説しています。

 

 

墨打ち=基準線を描くことですが「芯の罫書/ピッチと直角の確認方法」で解説しているように、簡単そうで実は難しい作業です。

 

墨打ちは失敗する

私は今までにマテハン装置や多数の装置を据え付けてラインとする工事を経験してきました。

+ マテハンとは? クリック表示

マテハンとはマテリアルハンドリングの略で、モノの「移動」や「取り扱い」全般を指す言葉です。機械装置業界でマテハンと言えば、作業者を介さずに製品の製造が完結できる装置や製造ラインのこと言います。

ですから、現場でマテハンと言えば多数の装置が一連となって工場にレイアウトされている状況です。

 

私の経験では、装置のレイアウトが長距離で、交差点が多く複雑になるほど墨打ちの重要性と難易度が高まり、間違いが生じやすくなると感じています。

実際に基準線が数ミリズレているならまだしも、基準線が大幅に違っている場面に直面したことがあります。

 

 

なぜ失敗するのか?

私が見てきた失敗事例をまとめるとその原因は2つに絞られます。

  • 暗算で計算している
  • 1か所のポイント(基準点)からの測定で作業を進めている

そんなこと?何が悪いの?

そう思われるかもしれませんが、この2つのポイントを改善するだけで飛躍的に間違いが減り、墨打ち精度が高くなるのは間違いありません。

 

失敗の原因を考える

それでは、前述の墨打ちの原因について掘り下げて考えてみましょう。

暗算で計算している

暗算で計算すると、簡単な計算でも間違えるリスクが高いと思います。

  • 墨打ち作業中に暗算すると、プレッシャーや焦りによって計算ミスが多くなる
  • 人間はエラーを起こすものなので、簡単な計算でも暗算は間違えることがある

作業中に計算する場合、墨打ち作業が滞っている状態であることが多く、作業者は「計算待ち」となっています。そのようなプレッシャーがあると、単純な暗算の計算であっても普段間違えないようなミスを犯すものです。また、暗算は人間の正確性に頼っていますから、よほど暗算に自信がない限り辞めておいた方が良いでしょう。「人間はエラーを起こすもの」を忘れてはいけません。

 

1か所のポイント(基準点)からの測定で作業を進めている

1か所のポイント(基準点)からの測定で作業を進めると、誤差が大きくなり間違いや矛盾点にも気が付かないことが多くなります。

  • 1か所からの測定は長距離(10m以上)測定となる可能性があり、そうなると「測定器の誤差」と「目盛りの読み取り誤差」が大きくなっていく
  • 1か所からの測定のみだと、いくつかある基準線の相互関係の間違いや矛盾点などの異変に気付きにくくなる

 

墨打ち作業で使用する測定器と言えば「トランシット」や「レーザー墨出し器」や「巻き尺」がありますが、トランシットの場合は長距離になると望遠鏡から見える対称の目盛りが小さくなるので水平線(十字線)が目盛りのどの位置を示しているかを正確に読み取ることが困難になります。

レーザー墨出し器の場合は、長距離になるとレーザー光の幅が広くなったりぼやけてしまいレーザー光がどこを示しているのかを確認することが難しくなります。

巻き尺は材質がPVCのタイプはしなやかで扱いやすいですが、長距離になると「伸び」が発生し目盛りに狂いがおきます。材質が金属の場合は癖が強く扱いにくいのが欠点です。

また、それぞれの測定器には器差や精度誤差が必ず存在するので距離が遠くなほど不利に働くことになります。

 

そして、1か所からの測定のみで全ての墨打ちを完結させようとすると、確認を怠る可能性が高くなります。例えば図面が間違えていて矛盾していることや作業者の目盛りの読み間違いなどが起こったとして、それに気が付くことができるのか?と言うことです。墨打ちは機械装置を設置するうえで「かなめ」となる重要な基準です。取り返しがつかない事態とならないように、間違いや矛盾点に気が付くような方法とすべきでしょう。

 

失敗しない方法

ここまでで、墨打ち作業の「失敗」について考えてきましたが、ここからはそれらの問題点を踏まえて「失敗しない方法」について考えてみたいと思います。

 

失敗しないための心得と方法

  1. 必要な寸法は事前に計算やCADで確認して図面に書き込んでおく
  2. 寸法の計算は必ず計算機を使用する
  3. 測定は1か所からだけでなく、長距離の場合はいくつかのポイントを基準点とする
  4. 基準線の位置は基準点からだけでなく、基準線同士の相互関係でも測定をおこなう

これらは私が実際に実施していることであり、失敗を低減できる方法だと思っています。

 

1.必要な寸法は事前に計算やCADで確認して図面に書き込んでおく

墨打ち作業の事前準備として、必ず図面でイメージトレーニングをしておきます。墨打ち作業は大規模なものでない限り、半日~一日で作業が終わる作業ボリュームです。ですから、限られた時間で滞りなく墨打ち作業が進むように図面を確認しておくことが重要です。

 

作業の進め方やどこを基準点とするのか?を決定しておくのと同時に、必要な寸法が抜けている場合には図面に書き込んでおくことも必要です。例えば、図面には装置の芯の位置寸法しか記載がない場合がほとんどですが、参考として装置のフレームの外側面の寸法を墨打ちしたいこともありますので、そう言った時には寸法を追記しておくのです。また、寸法の書き込み以外にも墨打ちする基準線の寸法に赤ペンでチェックを入れて、墨打ち作業中に見間違えない工夫をしておくのも有効です。

 

2.寸法の計算は必ず計算機を使用する

図面に記載がない寸法はCADで調べるか、計算機を使用して寸法を算出します。計算機を使用する場合も「数値の打ち間違い」をしてしまうこともありますから、少しでも疑問を感じたら何度も計算し直すことをお勧めします。私の場合はそもそも暗算が苦手なので、暗算で計算はしません。暗算で計算する作業者もいますが「間違っているときもある」ので、やはり暗算で計算することはおすすめできません。

 

 

そもそも、墨打ち作業は「全ての基準」ですから、絶対に間違えてはいけない作業なわけです。笑い事では済まさられないことなので、単純なミスが起きうる方法は除外すべきでしょう。

 

3.測定は1か所からだけでなく、長距離の場合はいくつかのポイントを基準点とする

墨打ち作業にはトランシットやレーザー墨出し器などの測定器を使用する場合が多いと思いますが、測定器は距離が遠くなるほど誤差が大きくなる欠点があります。前項でも解説していますが測定器には「測定器の誤差」と「目盛りの読み取り誤差」の問題があり長距離では不利です。

 

それを改善するためには、例えば10m以上の場合は新たに基準点を設けて測定器を設置し直し引き続き墨打ちを進めるやり方があります。私はそのやり方を「基準点を移す」と表現していますが、初めの基準点から測定器で新しい基準点を決定しマーキングし、その位置に測定器を設置して移動する前の基準点との位置関係を測定し合致性を確認することで新しい基準点を確定させます。そこまでできたら、新しい基準点から引き続き墨打ち作業を進めていきます。

 

4.基準線の位置は基準点からだけでなく、基準線同士の相互関係でも測定をおこなう

基準点から測定器を使用して基準線のポイントをマーキング/墨打ちしますが、無数にある場合は基準線に矛盾か生じることがあります。矛盾とは基準線同士の相互関係のことで、基準点からの寸法は合っているのに基準線同士の寸法にズレが生じます。

 

 

この原因には「巻き尺の目盛りの誤差」と「作業者のマーキングのズレ」が考えられます。巻き尺については前項で解説していますが作業者のマーキングについては、測定器からFLにポイントを書き写すマーキング作業でコンマ数ミリ単位でズレが発生します。ぱっと見では気が付かない程度なのですが、改めて測定し直して気が付くことが多いと思います。このような状態で作業を進めていくと取り返しのつかない誤差が発生することになるので、基準線のポイントをある程度マーキングしたら、そのマーキングしたポイント同士のピッチを改めて測定して「ズレ」の修正をします。

通常はピッチで測定していくと、1か所の基準点からの測定よりも誤差が大きくなるのですが、墨打ちに限っては長距離測定によって測定器の誤差の方が測定方法の誤差よりも大きくなる可能性があり、ピッチで測定して整合性を図る方法が有効になるのです。

 

墨打ちを失敗しない方法まとめ

墨打ちを失敗しないための心得と方法について解説してきましたがいかがでしょか。

私が言っている「墨打ちの心得と方法」はどれも難しいことではなく、誰もができることではないでしょうか?大切なことは「自分の作業を自分自身で疑うこと」です。

つまり、人間はエラーを起こすものであるし、測定器も誤差があるのだから「絶対」はないわけです。この考えが前提にあれば、無意識に寸法の確認ができるし、測定器の扱い方も変わってくるでしょう。

 

何をもって「正」とするのか?

 

間違いや失敗をしてから誰かの責任にしたり、測定器のせいにしたりするのはあまりにも子供じみています。

そうではなくて「どうすれば間違いや失敗をしないのか?」をよく考えて欲しいのです。

 

今回の記事は実はあらゆる作業に通じる「考え方」であるのかもしれませんね。

 

以上です。

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