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グリスと研磨でドライブシャフトを強化する
ドライブシャフトは車高を低くしたり、スポーツ走行することによって様々な問題が起きます。
私は2018年12月にその対策として下記の2点を行いました。
- レース用の等速ジョイント用グリス「オメガ85」を使用する
- ドライブシャフトの可動部をバフがけ研磨し摺動抵抗を減らし滑らかな可動とする
*こちらの詳しい作業内容は以前の記事 ⇒ 高精度ドライブシャフト/S2000 で解説しています。
オメガ85 プロフィール
等速ジョイント以外にも過酷な環境下での機械装置にも使用できます。
そして今回、1年使用したドライブシャフトをオーバーホールすることにしました。
なぜか?
- 初めて使用したグリスなので劣化具合を知りたかった
- バフがけ研磨した可動部にカジリなどの異常が起きていないか?確認したかった
このような理由です。対策した効果があったのか?と判断することは非常に大切ですよね。
ドライブシャフトの使用状況
オーバーホールする前に、1年使用したドライブシャフトの使用状況をまとめておきましょう。
- 鈴鹿サーキットを11回走行・・・2019年7月~2020年4月まで
- 走行距離・・・約10.000キロ(町乗り&サーキット)
このような使用状況です。走行距離は一般的に見ても平均値ですが、やはりサーキット走行がかなりの負荷となっているはずです。
グリスの劣化と摩耗具合
それでは中身をバラシながら状態を確認していきましょう。
check1 可動部の滑らかさ
ドライブシャフトのブーツを取り外した状態で、アウトボードの可動滑らかさを下記の動画で確認してください。
かなり滑らかに可動しており、前回オーバーホールして仕上げた時の状態と変わりなく、問題ないと思いました。
動画
アウトボードの滑らかさ
写真
参考で写真を掲載します。
check2 グリスの劣化具合
グリスの劣化はなかなか分かりずらいものです。
私の場合は4点に絞ってグリスの劣化判断をしています。
グリスの劣化判断
- 金属粉が混入・・・グリスの潤滑性の低下で金属が摩耗している
- 油分あるか・・・高温環境で油分が無くなりパサパサになる
- 粘度の低下・・・増ちょう剤が破壊されて軟化する
- 変色・・・金属粉やオイルシール粉が混ざったりグリスの酸化で黒色系になる
この劣化判断を元に、1年使用したグリスを判断してみました。
- 金属粉が混入・・・グリスのギラツキ(見た目)やザラツキ(触診)はなかった
- 油分あるか・・・つやつや(見た目)でぬるぬる感(触診)があり油分に問題はない
- 粘度の低下・・・柔らかくなっているが、糸引く粘りがあり、グリスが流出するほどの粘度低下ではない
- 変色・・・黒色系に変色している
*グリスはレース用の等速ジョイント用グリス「オメガ85」使用しています。
この劣化判断をまとめますと、「1年使用しても著しく劣化しているわけではなくグリスとしての機能を果たしている」と言えると思います。
ただ疑問なことは、どの程度使用できるか?ですが、そこまでの判断は想像でしかなく難しい課題です。現段階では「サーキットで1年使用しても問題ない」としか言えません。
それでは、動画と写真でグリスの劣化具合をご覧ください。
動画
1年使用したグリスと新品のグリスの違い
写真
check3 中身の損傷
中身の損傷の確認は触診と見た目で判断しました。
- 触診・・・可動部がひっかっかりなくスムーズに動くか?
- 見た目・・・摩耗やキズがないか?
この判断基準で確認してみますと
- 触診・・・インボード側、インボードベアリング、アウトボード側、のひっかっかりはない
- 見た目・・・あたりが強い所に摩耗や擦り傷が見受けられました。
このような結果でしたが「ドライブシャフトの機能として著しく低下はしておらず、今後も問題なく使用できる」と判断しました。
それでは写真で損傷具合を判断してください。
写真
1年使用したドライブシャフト
グリスと摩耗具合のまとめ
ドライブシャフトの中身をバラしてグリスと摩耗を判断してみましたが、結論は「問題ない」と言うことでした。
グリスは著しい劣化はなく、ドライブシャフトの可動部は擦り傷や摩耗はあるものの、それは通常使用するうえで必ず起きることでサーキットを走ったから起きたことでなないと結論付けました。
組付け
それではバラシて診断した結果「問題なし」と判断したので組付けていきます。
今回おこなった組付けの方法は下記の4点です。
- 洗浄・・・パーツクリーナで古いグリスを完全除去
- アウトボード側はバラさない・・・スライドハンマーでの打ち抜きが必要で、前回研磨していので今回はおこなわない
- インボードのベアリング修正・・・1番当たりが強かったベアリングホルダーとベアリングをピカールで修正しました
- 新品のグリスに詰替える・・・今回もオメガ85番のグリスを使用します
このなかでも「インボードのベアリング修正」と「新品のグリスに詰替える」について解説しておきます。
ベアリングの修正
インボードのベアリングホルダーとニードルベアリングに擦り傷や摩耗が多かったので、今回は研磨剤のピカールを使用して修正しました。
*本格的な研磨はやりすぎると、はめ合いのクリアランスが広くなってしまうし時間もかかる。
写真
新品のグリスに詰替える
今回は前回のオーバーホール同様にオメガ85番のグリスを使用します。1年使用してみて問題ないと実績を作りましたので、信頼して使用できますね。
*分解したニードルベアリングの中身とアウトボード側の内部にはしっかりとグリスを詰めます。
写真
まとめ
今回は一年使用したドライブシャフトをバラしてみてグリスと摩耗の具合を判断してみました。
グリスやドライブシャフトのオーバーホールについて調べてみますと「あれが良い」「これが良い」と様々な情報はありますが、実際に使用して結果どうだったのか?などの情報は非常にすくなく、本当に良いのか?と疑問に感じてしまいます。
そんななかで、今回の私の事例は参考にして頂ける内容となっていると思います。
関連記事:S2000
以上です。